図1-27 抽出クロマトグラフィーによるMA分離回収
図1-28 要素試験装置分離塔
図1-29 分離塔内における流速の変化
マイナーアクチニド(MA)の分離回収技術は、各国で実用に向けて溶媒抽出法を中心とした研究開発が進められています。一般に溶媒抽出法は抽出剤を溶剤に希釈して使用するため、これに付随する多種・多量の廃液の発生を抑制することが望まれます。抽出クロマトグラフィーは、溶媒抽出法のような希釈剤を必要とせず、抽出剤を固体粒子(担体)に固定(担持)して使用するため、MAを高密度に取り扱える可能性があり、より経済性に優れたシステムが構築できるものと期待されます。このような抽出クロマトグラフィー技術について、工学規模における分離回収プロセス,装置及び関連する遠隔運転保守技術を構築し、その基本性能を確認することを目的として、研究開発を進めています。
使用する吸着材の担体としては、安全性や処理性能などの観点から優れた性能を有するSiO2-P粒子(多孔質のSiO2粒子にスチレン-ジビニルベンゼン高分子を被覆した粒子)を選定しました(図1-27)。この担体に、溶媒抽出向けに開発されたCMPOなどの抽出剤を担持した数種類の吸着材を対象に、MAなどの分離性能評価,耐酸性や耐放射線性などの安全性評価,また、使用後の吸着材の処理方法の検討を進めています。これまでに各吸着材についてMAの安定した分離回収が可能となる条件などを取得・蓄積しており、これらを踏まえて各吸着材を用いたMA回収フローシートの構築及び相互比較評価を行う計画です。
実用化に向けて重要となる機器開発の面からは、分離塔内における水溶液や放射線分解ガス,吸着材などの流動性や温度制御性,繰返し運転時の性能を調べるため、工学規模の要素試験装置を製作し、試験を進めています(図1-28)。これまでにMAの安定的な分離回収に必須である分離塔内における溶液の均一な流れの確保が可能であることを確認しました(図1-29)。
並行して進めている計装制御システムの構築や運転保守における遠隔操作性に関する検討結果をあわせ、分離性能,安全性,計装・制御及び遠隔運転保守にかかわる基本性能を工学規模試験などにより総合的に確認・評価していきます。
本研究は、文部科学省からの受託研究「抽出クロマトグラフィ法によるマイナーアクチニド回収技術の開発」の成果の一部を含みます。