8-2 低放射性廃棄物の廃棄体化に向けて

−東海再処理施設における低放射性液体廃棄物処理の将来計画−

図8-3 低放射性廃棄物処理技術開発施設(LWTF)

図8-3 低放射性廃棄物処理技術開発施設(LWTF)

地下2階,地上5階の鉄筋コンクリート造で建築面積約2,400m2(40m×60m)の建家で、地上階には固体廃棄物処理設備を地下階には液体廃棄物処理設備を配置しています。

 

図8-4 液体廃棄物処理の現状と将来計画
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図8-4 液体廃棄物処理の現状と将来計画


2006年9月に約四年半の建設期間を経て低放射性廃棄物処理技術開発施設(LWTF)が完成しました(図8-3)。LWTFは東海再処理施設から発生する低放射性の固体及び液体廃棄物の処理技術を実証する施設です。ここでは、液体廃棄物の処理技術として、核種分離技術やLWTFで将来組み込む予定のセメント固化技術,硝酸根分解技術の開発を紹介します(図8-4)。


1.核種分離技術の開発

核種分離では、固化体の埋設処分時の費用軽減を目的とし、固化の前処理として、廃液中の放射性核種と塩を分離します。核種分離により、処理済廃液のほとんどが放射能濃度の低い硝酸塩廃液となり、放射能濃度が高く地層処分されることになるスラリ廃液の体積は、元の廃液に対し1/10程度となります。核種分離の方法としては、放射性核種ごとの化学的挙動を考慮して、以下のような複数のプロセスを組み合わせています。今後、実廃液を用いて、核種分離性能を実証していきます。
(1)ヨウ素は、硝酸銀(AgNO3)でヨウ化銀(AgI)として不溶化し、細孔径が数10Åの中空糸型限外ろ過(UF)膜で固液分離します。
(2)プルトニウムなどのα核種及びルテニウムなどのβγ核種は、硝酸第二鉄(Fe(NO33)で水酸化鉄(FeO(OH))として共沈させ、UF膜で固液分離します。
(3)溶解度の高いセシウムなどは、チタン酸ナトリウム([TiO(CO3)・TiO(ONa)2n)とフェロシアン化コバルトカリウム(K2Co[Fe(CN)6])を用いたイオン交換法により吸着処理します。


2.セメント固化技術の開発

核種分離により発生したそれぞれの廃液は、蒸発缶で水分量を調整し、インドラムミキシング法により、固化処理を行う計画です。セメント材には、廃棄物の充てん率が高く、硬化時間も短時間である高炉水砕スラグを主成分とした特殊なスラグセメントを用いることとしております。

これまでのビーカー試験において、硝酸ナトリウム(NaNO3)充てん率〜50wt%での均一固化が可能で、作製した固化体は10MPa以上の一軸圧縮強度を有することを確認しています。更に実規模試験装置にて作製した200Lドラムサイズの固化体の圧縮強度,密度を測定した結果、ばらつきが少なく均質な固化体であることを確認しました。


3.硝酸根分解技術の開発

廃液中には高濃度の硝酸根が含まれていますが、固化体を埋設処分する際には処分環境中の硝酸性窒素の濃度を低く抑える必要があります。このため、固化処理前に廃液中の硝酸根を金属触媒と還元剤(ヒドラジン(N2H4),ギ酸(HCOOH))を用いた触媒還元法にて分解処理をする計画です。分解に伴い水酸化ナトリウム(NaOH)が回収できるため、試薬としてリサイクルすることにより、廃棄体低減も期待できます。

これまでの試験において、約400g/LのNaNO3溶液に対して、90%以上の高い分解率が得られることを確認しました。今後は実証化に向け、操作条件最適化や触媒長寿命化などの試験を継続していきます。