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9 バックエンド対策に関する技術開発

廃止措置から廃棄物処理処分までの合理的なプロセスの確立を目指して

図9-1 原子力施設の廃止措置、放射性廃棄物の発生から処分に至る過程と技術開発の関係
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図9-1 原子力施設の廃止措置、放射性廃棄物の発生から処分に至る過程と技術開発の関係


原子力施設の廃止措置や放射性廃棄物の処理処分は「バックエンド対策」と呼ばれ、中期目標にもバックエンド対策の計画的、安全かつ合理的な実施が掲げられております。また、2008年6月には「独立行政法人日本原子力研究開発機構法」の一部が改正され、原子力機構及び大学や研究機関並びに民間施設などから発生する研究施設等廃棄物(低レベル放射性廃棄物)の埋設処分事業が私たちの業務と位置づけられました。
 このようなミッションの遂行には多額の費用が必要となるため、安全確保を前提として合理的なバックエンド対策を可能とする技術開発が求められています。そのため、私たちは、図9-1に示すように廃止措置から廃棄物処理処分までの合理的なプロセスの確立を目指して、バックエンド対策の全体にかかわる技術開発を進めています。また、各拠点でも、それぞれが保有する原子力施設特有の課題の解決を目指した技術開発を進めています。

2007年度の主要な進捗状況は以下のとおりです。

原子力施設の廃止措置に係る技術開発

原子力施設の合理的な廃止措置技術としては、事前の廃止措置計画立案・検討を支援する廃止措置エンジニアリングシステム、廃止措置に伴い発生する放射性物質として扱う必要のない廃棄物の安全なクリアランスに向けた検認評価システムの試作版を作成しました。

各拠点の技術開発として、原子炉廃止措置研究開発センターでは「ふげん」の炉心構造材等中の放射化残存放射能量の評価手法の検証(トピックス14-1)、人形峠環境技術センターではIF7を用いたウラン除去回収技術の開発(トピックス14-11)、原子力科学研究所では廃液タンク解体作業での一括撤去工法の適用検討が行われました。

放射性廃棄物の処理に係る技術開発

放射性廃棄物処理技術としては、処理システムの合理化,処分時の環境負荷の低減化を図るための技術開発を進めています。具体的には、放射性廃棄物からプルトニウムを除染する方法として超臨界二酸化炭素による除染技術の実用化に向けた基礎データを取得しました。更に、放射性廃棄物を梱包しているビニルバッグを効率的に除去して分別作業を容易にするためのか焼処理技術,TRU廃棄物の脱硝技術として貴金属触媒を用いる還元分解技術の開発を進めています。

そのほか、原子力機構の各拠点の放射性廃棄物を発生から処理,保管,廃棄体確認まで統一的に管理するための廃棄物管理システムの開発を進め、原子力科学研究所を対象としたモデルデータベースを作成しました。

放射性廃棄物の処分に係る技術開発

放射性廃棄物処分技術としては、廃棄体の放射能確認技術の開発,処分時の安全性評価を進めています。放射能確認技術では、放射性廃液中の90Srの分析方法としてディスク状固相抽出剤とβ線スペクトロメトリー法の組合せによる迅速な放射能定量法を開発しました(トピックス9-1)。

一方、研究施設等廃棄物処分時の安全性評価としては、原子炉廃棄物の放射能特性評価を進めるとともに、ウラン廃棄物処分場の安全性評価を進めました。ウラン廃棄物処分場の安全性評価では、長期の安全性評価として将来の発生が確からしいと予見される隆起や海水準変動などに起因する長期的な地形や気候変動シナリオを選定し、被ばく線量との関係について評価を行いました。その結果、造構運動−隆起・侵食を想定した場合に、被ばく線量が比較的高くなる場合もあることが分かりました。