図12-5 IMAGINEシステムの概念図
図12-6 選定システムの概念図
原子力分野で必要とされている、原子炉全体の詳細振動解析のような大規模シミュレーションを可能とするため、世界中の計算機を連携してあたかもひとつの大きな計算機のように利用できる原子力グリッド基盤:AEGISを開発しています。AEGISでは、グリッド基盤を容易に利用できるように、共通クライアント(API: Application Programming Interface)を開発し、自分が開発したプログラムから他の計算機を、プログラムを数行変更するだけで利用できるようにしました。ここでは、AEGISの活用事例として二つの研究を紹介します。
IMAGINE(図12-5)は原子力機構・原子力基礎工学研究部門が開発を行っている、X線がん治療をより効果的に行うための線量計算システムです。IMAGINEは、X線の照射位置や強度を少しずつ変化させながらX線ががんとそれ以外の組織へ与える影響をモンテカルロ法に基づき計算するため、同様な計算が数多く発生します。
IMAGINEから遠隔地にある大型計算機を利用するため、APIを利用しAEGIS上の計算機を利用可能としました。この成果により、FUJITSUファミリ会より、奨励論文賞を受賞しました。
本研究では、フランスとの国際研究交流のもと、日仏の計算環境上に最適な線形ソルバー(連立方程式求解プログラム)の選定システム(図12-6)を構築することを目指しています。線形ソルバーは多くの場合、シミュレーションの中で最も計算時間やメモリ量を必要とするため、シミュレーションの高速化や高精度化のためには、目的に応じたソルバーを探し出すことが重要です。選定システムは、解きたい方程式の特徴情報から計算時間などを推定し、候補となるソルバーの中から最適なものを探し出すため、候補となるソルバーの数や種類を増やすことで、より適したものを探し出せます。そのために、AEGISとフランスで開発されたグリッド基盤DIETを連携させ、日仏両国に設置された多数の計算機上のソルバーから最適ソルバーを選定できるようにしました。
本研究は、独立行政法人科学技術振興機構(JST)戦略的国際科学技術協力推進事業の一環として実施しています。