図1-26 マイクロ波加熱の突沸現象観測
図1-27 実験用容器 (3タイプ)
図1-28 気泡浮上速度νの求め方
図1-29 気泡の浮上速度(容器形状による相違)
FBRの実用化のためには燃料製造のコストの低減と量産化が不可欠です。「実用化戦略調査研究フェーズII」では、簡素化ペレット法燃料製造(工程の簡素化:粉末混合工程の削除などを含む)における量産規模の設計案とし、円筒形状のマイクロ波加熱(脱硝)容器を複数並べて配置したターンテーブル方式(装置コンパクト化が特長)が提案されました。従来の扁平型の浅皿容器と長柱型の円筒容器の特徴を定量的に比較し、適合性を判断する必要が生じました。
沸騰や噴き上げ(突沸)事象を解明する目的で、水のマイクロ波加熱時に生じる沸騰挙動をPIV(粒子画像流速測定法)可視化手法により観測しています。対流型の通常加熱では、容器内面の傷の部分に小さな気泡が生じ(不均質核生成)、それがトリガ−となり100℃で沸騰に至りますが、傷がなければ水中に気泡発生のための核を生成しなければならず、300℃以上の高温で沸騰が生じます(均質核生成)。これに対し、輻射型のマイクロ波加熱では、任意の一点に均質核が生成されるため、表面に依存することなく100℃で沸騰が生じます。通常加熱とは顕著に異なるマイクロ波加熱による沸騰の特質は、筑波大学との共同研究を通じて明らかになり、この分野における世界初の成果です。
観察の結果、容器形状の相違(図1-26,図1-27)により沸騰状況が異なることが分かりました。Type1では単一気泡が発生し、時間とともに成長して水面に波立ちが生じます。次いで気泡下部が崩壊し、突沸に至ります。気泡崩壊後に微小気泡が膨張しながら合体し、二度目の突沸が発生します。Type2では単一気泡が発生し、成長過程で気泡の下部に摂動が生じて水面に波立ちが発生します。膨張した気泡が水面に接した時点で気泡上部の液膜が薄くなり、崩壊が起こり、細かい気泡が多く発生します。Type3も同じ挙動ですが、水面の波立ちは微弱です。扁平・中間型容器では気泡が水面上で崩壊して突沸が生じないのに対し、長柱型容器では水面下で気泡が崩壊して突沸が起こることが確認されました。浅皿が優位性を呈する根拠です。
扁平型の場合は20cm/s 程度(図1-28,図1-29)であるのに対し、長柱型の場合は50cm/s に達します。浮上速度は容器形状のみならず、気泡が壁面に接触するか否かによって異なることも確認しています。浮上速度と吹き上げ高さの関連に注目しているところです。
今後、硝酸プルトニウム/ウラン混合溶液の物性値を考慮し、マイクロ波脱硝条件の最適化及び容器形状の選定を進めます。