1-8 巨大地震時の免震装置の終局挙動を把握する

−水平免震システムの免震効果確認と終局挙動試験−

図1-19 水平免震システムの試験状況

図1-19 水平免震システムの試験状況

積層ゴムの破断までの震動台試験としては、世界最大規模の試験を行いました。この試験により、暫定設計地震動に対する免震効果を確認するとともに、暫定設計地震動の4倍以上の入力に対する免震システムの終局挙動データを取得しました。

 

図1-20 積層ゴムの破断の瞬間

図1-20 積層ゴムの破断の瞬間

積層ゴムが破断する瞬間をとらえた写真です(試験時のビデオ映像から)。積層ゴムの破断はゴムの端部から発生しており、破断時にはゴムの中央の鉛プラグの破片が飛び出しました。

図1-21 破断時の応力状態

図1-21 破断時の応力状態

実線は、積層ゴムが破断した試験での軸方向応力とせん断ひずみの関係を示しています。桃色のプロットは、静的荷重試験で得られた破断限界です。震動試験においても、積層ゴムは、この破断限界を超えたときに破断することを確認しました。

FBRプラントの設計において、地震荷重の大幅な低減による内部機器の安全性向上を目的として、原子炉建屋を積層ゴム免震装置で支持する水平免震構造の導入を検討しています。設計地震動を超える巨大な地震に対する免震プラントの応答特性を把握し、裕度評価手法を確立することを目的として、財団法人電力中央研究所と共同でFBR水平免震プラントの終局挙動試験を実施しました。

免震効果は、建物の下部に設置する柔らかいばね(積層ゴム)によって、建物がゆっくり揺れるようにする(加速度を小さくする)ことで得られます。積層ゴムの荷重と変位の関係は荷重が比較的小さい領域ではほぼ線形であり、設計地震動に対してはこの線形領域内で応答するように(適切な裕度を持たせて)設計されます。荷重が大きくなると、ゴムの剛性が硬くなる(ハードニング)ため、免震装置としての応答低減効果はなくなり、やがてゴムが破断することになります。本研究においては、免震構造の終局状態である積層ゴムのハードニング域における応答低減効果の喪失と積層ゴムの破断挙動に関するデータを取得します。

今回の試験は、実際の免震プラントにより近いスケールでの終局挙動データを取得するため、世界最大級の三次元震動施設である独立行政法人防災科学技術研究所の「E-ディフェンス」を用いました。試験体は、質量約600tの上部構造とこれを支持する外径505mm(想定実機の約1/3サイズ)の鉛プラグ入り積層ゴム6体で構成されます(図1-19)。震動台試験は、まず暫定的に設定した設計地震動による加振試験により、免震構造による応答加速度の低減効果を確認しました。その後、設計地震動の最大加速度レベルを増加させて積層ゴムのハードニング挙動及びゴムの破断現象を把握する終局挙動試験を行いました。本試験の場合、積層ゴムは暫定設計地震動の4.0〜4.8倍で破断し(図1-20)、そのときの破断ひずみは550〜600%程度でした。破断時の軸方向応力とせん断ひずみの関係(複合応力状態)は、積層ゴム単体の静的荷重試験で得られた破断限界曲面と良く対応することを確認しました(図1-21)。

今回取得した直径505mmの積層ゴムの破断試験データは、前例のない規模であり貴重なものです。今後は、本データを活用して免震プラントの裕度評価手法の整備を進めていきます。