1-7 ナトリウムの燃え方に迫る

−初期の表面酸化反応で生成するユニークな酸化物成長への影響因子−

図1-15 Na液滴燃焼試験装置

図1-15 Na液滴燃焼試験装置

 

図1-16 Na燃焼の事象推移(酸素濃度20%の場合)
拡大図(36KB)

図1-16 Na燃焼の事象推移(酸素濃度20%の場合)

始めに表面酸化反応を主体とした事象があり、反応が継続するとやがて反応熱で液体Naの温度が上昇して液相から気相に蒸発したNa蒸気と雰囲気中の酸素が反応する気相反応に推移します。

 

図1-17 液滴内部温度

図1-17 液滴内部温度

 

図1-18 柱状酸化物の成長の様子
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図1-18 柱状酸化物の成長の様子

液体Naの表面の反応では、柱状酸化物が、酸素の供給される方向に向かって自ら成長していきます。

FBRでは、万が一冷却材のナトリウム(Na)が漏えいした場合でも、原子炉を安全に停止し炉心を冷やし、放射性物質を施設内に閉じ込めるように設計されています。例えば2次系のNaが漏えいして雰囲気の酸素などと反応し酸素濃度や温度などの条件が整うと燃焼しますが、窒息や冷却によってNaの燃焼を終息させます。このような、事故時の反応を想定しても、プラントの安全性が担保されるように設計する必要があり、その評価を行うためには、Naの燃焼過程を詳しく明らかにする必要があります。

図1-15に示すような試験装置を使い、酸素とNaの反応面が観察しやすいように、Na液滴の下から酸素を供給して反応させ、その挙動を高速度カメラで観察すると同時に液滴内部の温度を計測しました。この同時計測により表面の酸化物の生成・成長状況と内部温度の対応をとることが可能になりました。Na液滴の燃焼では、液滴の表面の酸化反応から次第に気相反応に推移します(図1-16)。

液滴温度は、酸素濃度条件によって発熱と放熱がバランスする温度があり、酸素濃度が高いほど、液滴のバランス温度が高くなることが分かります(図1-17)。

これらの観察と測定の結果から、反応初期の表面酸化で液体Naの表面は白色の酸化物で覆われ、気相反応に移行するまでの間に酸化物上にユニークな柱状の反応生成物が生成・成長するという現象の推移が見られました。また、この酸化物は酸素濃度や初期のNa温度が低いほど大きく成長することが分かりました。

この柱状の酸化物の成長を観察するため、平板上の金網に付着させたNaに酸素を吹き付けて反応させ、真横から高速度カメラで撮影しました。これらの観察から、柱状酸化物は未燃焼のNaを酸素との反応界面に供給して燃焼を継続させる働きをしていることが分かりました(図1-18)。

この研究は、Na酸化反応における反応生成物の生成条件、成長メカニズムの理解から燃焼に寄与するNaの質量移行機構を把握することによって、燃焼解析手法の高度化などに活用していきます。更には、様々なプラント環境下におけるNaの反応現象の理解が望まれていますので、このような要素的な試験から燃焼メカニズムの解明につなげていきたいと考えています。