図14-25 「瑞浪超深地層研究所」研究坑道のレイアウト
図14-26 先行ボーリング掘削時の湧水状況 | 図14-27 深度300m研究アクセス坑道(水平坑道)平面図 | |
先行ボーリングを掘削したときに発生した湧水(写真の湧水量は毎分約1200L)です。 | 坑道掘削に先立ち、先行ボーリング(掘削長62.5m)を実施しました。 |
図14-28 深度300m研究坑道におけるプレグラウチングと坑道掘削のパターン説明図
高レベル放射性廃棄物の地層処分の技術基盤を整備するため、岐阜県瑞浪市にある「瑞浪超深地層研究所」において花崗岩を対象とした深地層の科学的研究を進めています。研究坑道の掘削は、2009年度末で主立坑459.6m,換気立坑459.8mまで到達しました(図14-25)。
研究坑道はボーリング調査などにより掘削範囲の地質や地下水状況を把握した上で掘削しています。これまでの調査で、換気立坑側の深度200m付近や400〜450m付近、深度300m研究アクセス坑道で大量湧水が発生する可能性が高いことが分かりました。そこで、坑道掘削に先立ち掘削範囲の周辺の割れ目にセメントミルクを注入する工法(プレグラウチング)により、湧水を抑制しました。
ここでは深度300m研究アクセス坑道で実施したプレグラウチングと坑道掘削について説明します。坑道掘削に先立ち、掘削範囲を対象に先行ボーリングを実施しました(図14-26,図14-27)。その結果、複数の箇所で1,000L/分を超える湧水箇所が確認されました。この情報をもとにプレグラウチングを実施しました。プレグラウチングと坑道掘削の施工は、プレグラウチングの注入孔の削孔長を約15mとして注入を行い、その後、このうち延長約10mの坑道を発破工法で掘削しました(図14-28)。このパターンをA〜Fの六つの断面位置(図14-27)で繰り返し行い、延長約100mの掘削を完了しました。坑道を掘削した際には顕著な湧水は発生せず、坑道壁面の観察では、割れ目に注入されたセメントミルクが固化した状態が認められ、これにより湧水が抑制されたと推測できます。なお、技術開発の観点から、A〜Fの各断面からの注入状況を壁面観察時に視覚的に区別できるようにするため、A断面から順に赤と青に着色したセメントミルクを交互に注入し、効果の範囲が区別できるようにしました。これらのデータをもとにグラウチングの注入特性に関する検討を行う予定です。
湧水抑制の計画策定では、ボーリング調査からの情報をもとに、地下水浸透理論を用いて坑道周辺の透水性を低下させる割合やセメントの注入範囲を費用対効果も加味し、目標を定めました。この計画に基づき施工した結果、計画以上の湧水抑制効果を得ることができました。今後も必要に応じて湧水抑制を図り、安全を最優先させながら、更に地下深部へと坑道掘削を進めていくことを目指しています。