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14 研究開発拠点における試験技術・施設等の開発

敦賀本部

高速増殖炉研究開発センターにおいては、ナトリウム漏えい対策等の改造工事、プラント全体の機能を確認するプラント確認試験、原子炉を起動する前に弁やスイッチ等の状態を確認する性能試験前準備点検、新潟県中越沖地震等に関連した耐震安全性評価等を完了し、2010年5月6日、14年5ヶ月ぶりに「もんじゅ」の性能試験を再開しました。5月8日には原子炉が臨界に到達し、2010年7月22日に約3年間の予定で実施する三段階の性能試験の第一段階である炉心確認試験を完了しました。

また、2009年9月には、福井県内におけるレーザー技術による産業への貢献などを目指す「レーザー共同研究所」が創設されました。

原子炉廃止措置研究開発センター「ふげん」においては、廃止措置が着実に進められているとともに、関西電力株式会社との連携・協力による高経年化分析室(ホットラボ)が整備されました。

「もんじゅ」の性能試験再開を岡 B理事長(当時)に報告する向所長

「もんじゅ」の性能試験再開を
岡ア理事長(当時)に報告する向所長
(2010年5月6日)

 

レーザー共同研究所開設記念式典(2009年9月29日)

レーザー共同研究所開設記念式典
(2009年9月29日)

   

東海研究開発センター原子力科学研究所

原子力科学研究所では、研究用原子炉(JRR-3,JRR-4,NSRR)、加速器(タンデム)、臨界実験装置(STACY,FCA等)、核燃料物質使用施設(WASTEF,BECKY,第4研究棟等)、さらに、大型非定常試験装置(LSTF)、大型再冠水実験棟等のコールド施設を活用して、各研究開発部門(原子力基礎工学,安全研究,量子ビーム応用研究,先端基礎研究等)が様々な研究開発を行っています。研究所が進める技術開発として、研究炉JRR-3の冷中性子ビームの高強度化、中性子測定器の校正用中性子標準場等の開発のほか、原子炉を模擬した熱水力試験における気液二相流の状態を調べるため、気相部分の体積割合(ボイド率)を高温高圧の条件下で実用的に計測できる技術を開発しています(トピックス14-2)。

原子力エネルギー利用と量子ビーム利用を支える原科研の施設
拡大図(175KB)

原子力エネルギー利用と
量子ビーム利用を支える原科研の施設
このほか、JRR-4,FCA,WASTEF,第4研究棟,タンデム加速器,FRSなど

 

原子炉の熱水力模擬試験を行う大型コールド施設

原子炉の熱水力模擬試験を行う
大型コールド施設
大型再冠水実験棟(手前)
大型非定常ループ実験棟(右奥)

   

東海研究開発センター核燃料サイクル工学研究所

プルトニウム燃料技術開発センターでは、「簡素化ペレット法」の実用化に向けた工学規模での燃料製造技術開発試験を実施しています。2009年度は、この試験で得られた燃料を利用して「もんじゅ」の性能試験に装荷する燃料18体を供給しました。また、ダイ潤滑成型試験のための設備を整備しました。さらに、プルトニウム及びウランの分析に関して、国内の核燃料施設で初めてISO/IEC17025:2005に基づく試験所としての認定を取得しました(トピックス14-4)。

また、再処理技術開発センターでは、耐震性向上対策工事を進めるとともに、耐震指針に基づく耐震安全性評価報告書提出に向けた準備を、サイクル工学試験部では、次世代原子力システム研究開発部門と連携し、先進湿式再処理技術などの開発(トピックス14-3)を、環境技術管理部では、東海固体廃棄物廃棄体化施設の焼却設備の設計検討を進めるとともに、地層処分研究開発部門と連携し、地層処分技術の向上などに関する試験を実施しています。

工学規模試験用ダイ潤滑成型機

工学規模試験用ダイ潤滑成型機

   

J-PARCセンター

2009年4月にニュートリノビームの発生を達成し、すべての実験施設で運用が始まりました。物質・生命科学実験施設(MLF)の中性子・ミュオンユーザーへの供用運転は2年目を迎えて、中性子実験装置8台、ミュオン実験装置1台で課題公募を行い、111件の一般利用課題を採択しました。2009年11月からは陽子ビーム強度を120kWに上げ、運転稼働率86〜92%という非常に優れた性能を達成しました。すなわち、2009年度は安定な100kW以上のビームでの供用運転に至り、2008年度に中期目標(100kWビームでの運転)を達成したことに続き、順調に開発を進めています。さらに、2009年12月に300kWの試験運転に成功し、MLFではこの時点で世界最高強度の中性子及びミュオンビームが生成されたことを計測しました。

J-PARC物質・生命科学実験施設の核破砕パルス中性子源への陽子ビーム輸送履歴(2009年度実績)
拡大図(117KB)

J-PARC物質・生命科学実験施設の
核破砕パルス中性子源への
陽子ビーム輸送履歴(2009年度実績)

 

   

大洗研究開発センター

FBRサイクル実用化研究開発に係る試験として、FBR用高燃焼度燃料及びマイナーアクチニド含有燃料等の照射後試験やナトリウム試験等を進めるとともに、実証炉用大型機器の開発のために冷却系機器開発試験施設の本格工事を開始しました。

材料試験炉(JMTR)は、2011年度の再稼働に向けた改修工事を進めるとともに、「汎用照射試験炉に関する国際会議」を通して、諸外国との情報交換や照射技術の活用などに関する検討を行いました。

高速実験炉「常陽」は、燃料交換機能の一部阻害(2007年11月発生)に関する法令報告(最終報)を提出し、再起動に向けて炉心上部機構の交換に係る装置等の詳細設計を行いました(トピックス14-8)。

高温工学試験研究炉(HTTR)は、50日間の高温連続運転(原子炉出口冷却材温度約950℃)を達成し、高温ガス炉の技術基盤の確立と実用化に必要な高温機器等の特性に関するデータを取得しました。

HTTRが50日間高温連続運転を達成

HTTRが50日間高温連続運転を達成

   

那珂核融合研究所

那珂核融合研究所は、核融合研究開発部門と一体となって核融合エネルギーの実用化を目指した研究開発を進めています。炉心プラズマ研究や工学研究を行い、フランスに建設される国際熱核融合実験炉(ITER)の国内機関として機器製作を進めるとともに、欧州と協力して進める「幅広いアプローチ(Broader Approach:BA)活動」のひとつとして、ITERの支援・補完研究を行う、サテライト・トカマクJT-60SA計画を展開しています。2009年度はJT-60SA実機コイルに用いる超伝導導体の初製作に成功し、2本が完成しました。またJT-60の解体準備作業を進め、撤去した放射化物を堅牢な保管容器に入れて安全に保管する専用エリア等を所内に整備し、収納保管を開始するとともに、JT-60SAで再使用する加熱装置用高電位テーブルや放射線遮へい壁等の移設を行いました。

解体準備作業が進みJT-60本体部分の搬出空間が確保された実験棟の様子(上)
拡大図(274KB)

解体準備作業が進みJT-60本体部分の搬出空間が確保された実験棟の様子(上)
初製作に成功し直径3mのドラムに巻き取られた1本のJT-60SA用超伝導導体(全長450m)(下)

   

高崎量子応用研究所

高崎量子応用研究所では、産業への応用を目指した新機能・環境調和材料,バイオ応用技術及び量子ビーム分析の研究開発や材料・機器等の耐放射線性評価研究のため、4基のイオン加速器からなるイオン照射研究施設(TIARA)と電子・ガンマ線照射施設を原子力機構内外の利用に供しています。また、マイクロビーム,シングルイオンヒット及び大面積均一照射等のビーム加速・形成及び照射技術や、三次元大気マイクロPIXE技術及び三次元精密描画加工技術などの応用技術の開発を行っています。2009年度は、ビーム利用効率を向上するために、異種・異なるエネルギーのイオンビームを短時間で切り換える技術開発(トピックス14-10)などを進めました。

エネルギーが異なる微細なプロトンビームを順次照射したあと 化学エッチングすることにより、三次元の精密な構造体を創製

エネルギーが異なる微細なプロトンビームを順次照射したあと化学エッチングすることにより、三次元の精密な構造体を創製

   

関西光科学研究所

木津地区では、高強度レーザーの品質向上,X線レーザーの高繰り返し化などの高度化を行っています。また、光医療研究連携センターでは、科学技術振興調整費プログラムの「『光医療産業バレー』拠点創出(第5章光医療研究連携)」の推進を、関西光科学拠点ネットワーク「融合光新創生ネットワーク」では、幹事機関として高品位高輝度光源の開発を行っています。

播磨地区では、大型放射光施設SPring-8にある4本の専用ビームラインで強力なX線を利用した最先端計測技術の開発・高度化を推進し、原子力開発において重要なアクチノイド物質を中心としたエネルギー・環境関連物質等の研究を進めています。

高強度レーザー装置(J-KAREN)

高強度レーザー装置(J-KAREN)

   

幌延深地層研究センター

幌延深地層研究計画は、「深地層の研究施設」を活用した計画のひとつであり、堆積岩を対象に深地層の研究を行っています。

2009年度の地下施設の建設については、換気立坑で深度約250m,東立坑で深度約225mまで掘削を進めるとともに、深度140mの水平坑道掘削は、東立坑から換気立坑に通じる部分が5月に貫通、西立坑(未着工)に通じる部分を含め9月に完了しました。

地上施設については、国内外の研究者の交流活動の拠点、地域の方々との交流の場を目的とする国際交流施設が完成し、10月17日より開館しました。

2010年度の地下施設の建設については、東立坑の掘削(深度約250mまで)及び深度250m水平坑道の掘削(換気立坑−東立坑間の貫通)を進めるとともに、湧水抑制のための調査や対策を継続し実施します。

地下140m調査坑道における試験

地下140m調査坑道における試験

   

東濃地科学センター

高レベル放射性廃棄物を安全に処分するための地層処分技術に関する研究開発のうち、主に花崗岩を対象とした深部地質環境の調査・解析・評価技術や工学技術の研究開発、地質環境の長期安定性に関する研究を実施しています。

現在、岐阜県瑞浪市で「超深地層研究所計画」を進めており、深地層の研究施設である「瑞浪超深地層研究所」の研究坑道掘削は、主立坑は深度459.6m,換気立坑は深度459.8mまで到達しました。調査・研究は、研究坑道掘削時の岩盤壁面の調査や深度300mの調査研究を行うための水平坑道(深度300m研究アクセス坑道、延長約100m)からのボーリング調査などを行いました(トピックス14-11)。

主立坑の深度400m付近から見上げた状況

主立坑の深度400m付近から見上げた状況

   

人形峠環境技術センター

人形峠環境技術センターでは、核燃料物質(ウラン)取扱施設である製錬転換施設及び濃縮施設に関する廃止措置技術開発を進めています。製錬転換施設では、2008年度から施設の解体を開始しました。製錬転換施設の解体は、「大型核燃料施設廃止措置」の国内初のケースとなるため、解体に要する人工数や実施内容,手順などの実績データを収集・評価することは、今後の同種の廃止措置を合理的に行う上で重要な役割を果たします。2008年度から2009年度末までに、製錬転換施設の管理区域37部屋のうち、14部屋の設備の解体・撤去を実施しました。解体された設備の総重量は約300tで解体予定の管理区域内の設備の約6割にあたります。引き続き、大型核燃料施設の廃止措置技術開発や、解体に要する情報の収集・評価を継続していきます。

製錬転換施設の解体状況
拡大図(133KB)

製錬転換施設の解体状況

   

青森研究開発センター

六ヶ所地区では、2010年3月に、欧州と日本の核融合の共同研究開発事業として実施される「核融合エネルギーの実現に向けた幅広いアプローチ(BA)活動」の拠点となる、国際核融合エネルギー研究センターの主要施設が完成し、本格的な研究開発に向けた準備が整いました。

むつ地区では、研究施設等廃棄物処分場の操業を見据えた大型機器一括撤去処分等合理的・経済的な解体手法における調査検討、クリアランス検認技術開発関連データの収集などを実施し、原子力船「むつ」原子炉施設の廃止措置を進めています。また、加速器質量分析装置(AMS)による極微量元素分析及び分析技術の開発を継続して行うとともに原子力機構内外の利用に供しています。また、第2回AMS利用報告会を開催しAMS利用者相互の情報交換を行いました。

国際核融合エネルギー研究センター施設完成記念式典セレモニーの様子

国際核融合エネルギー研究センター
施設完成記念式典 セレモニーの様子