図8-12 三次元X線CTによるイメージベースモデリング
第四世代原子炉システム(GEN-IV)の候補である超高温ガス炉(VHTR)の実用化に向けて、高温ガス炉の炉内に使用されている黒鉛構造物の長寿命化及びセラミックス構造物の開発を進めています。
黒鉛構造物の寿命評価では、寸法変化,ヤング率等の特性評価が重要ですが、それら特性は照射による黒鉛内部の微細構造(結晶,気孔)の変化に大きく依存します。また、セラミックス構造物の素材候補のひとつである炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット)は、樹脂含浸した炭素繊維を焼き固めたものです。C/Cコンポジットの内部には、製造時に発生する微細なボイド,クラック,気孔が存在しますが、これらは材料の特性に大きく影響します。そのため、微細構造から特性を予測する手法の開発が必要です。
そこで、東洋炭素株式会社と連携した共同研究として、三次元X線CTを用いたイメージベースモデリングにより黒鉛,炭素材料の微細構造と特性を関連付ける初めての試みに着手しました。本手法は、X線CTによる三次元画像を用いて結晶及び気孔の大きさ,分布を微小領域で定量化し、材料の特性を予測するものです。第一段階として、東洋炭素株式会社から提供されたC/Cコンポジットを用いて、三次元X線CT画像をもとにしたイメージベースモデリングの適用性を検討しました(図8-12)。X線CT画像から気孔状態を確認するためには、物質の有無を判定する2値化処理が必要です。そこで、詳細なX線CT画像解析を行って適切なしきい値を設定し、三次元で気孔状態を解析するモデルの作成に成功しました。また、黒鉛材料に関しても同様の手法が適用できることを確認しました。
現在、作成した解析モデルをもとに、黒鉛,炭素材料の微細構造と特性を関連付けるモデルの開発を進めています。本手法の開発は、黒鉛構造物の照射による特性変化を予測し、寿命評価を可能にするばかりではなく、新しい黒鉛・炭素材料の設計にも役立ち、一般産業分野にも大きく貢献すると期待されています。