図3-2 TFコイルの構造
図3-3 1/3規模(5.1 m×3.8 m)のダブル・パンケーキの試作
図3-4 実規模(13 m×8 m)ラジアル・プレートの試作
A1実規模試作品
B3の組立作業
図3-5 コイル容器の実規模試作
日本,欧州,米国,ロシア,韓国,中国,インドの七極が協力して開発を進めているITERでは、高温のプラズマを閉じ込めて、核融合反応を制御するために10 T以上の高い磁場が必要となり、これには巨大な超伝導コイルを使用します。プラズマを閉じ込めるための磁場を発生させるトロイダル磁場(TF)コイルは、高さ14 m,幅9 m,重さ約300 tの世界最大の超伝導コイルです(図3-2)。この超伝導コイルは、まずステンレス鋼製のラジアル・プレートと呼ばれるD型構造体の溝に超伝導導体を挿入し、カバープレートを被せて導体を固定し、ダブル・パンケーキを製作します。このダブル・パンケーキを7層積層して巻線部を製作し、この巻線部をコイル容器に収め、コイル容器を溶接し、コイル容器と巻線部の隙間を樹脂含浸して完成します。予備を含めて19個製作されるTFコイルのうち、日本は9個(コイル容器については19個)の調達を担当し、2010年6月から世界に先駆けて、TFコイル及びコイル容器の実規模試作を始めました。
巻線については製作精度が課題でしたが、自動巻線機を開発し、銅撚線を用いたダミー導体及び超伝導導体を用いて1/3規模のD型6ターン巻線を試作しました。それぞれラジアル・プレートの溝に収まる精度(±0.06%以下)で製作でき、課題をクリアしました。超伝導体を生成するために650 ℃で熱処理をしますが、その間の変形量を超伝導導体巻線で測定し、このデータを実機巻線の製作に反映します。絶縁技術については樹脂含浸が課題でしたが、ダミー導体を用いた巻線をラジアル・プレートの溝に納めて絶縁含浸し(図3-3)、これを解体検査して内部が正常に含浸できていることを確認し、課題をクリアしました。また、実規模のラジアル・プレートの試作を行い(図3-4)、溶接による変形量を測定し、実機製作に必要なデータを取得しました。
コイル容器について、製造技術の確立を目的として2箇所の実規模試作を行いました(図3-5のA1及びB3)。コイル容器製作において260 mmの深さを片面から溶接することが課題でしたが、狭開先自動TIG溶接で可能であることを確認し、課題をクリアしました。溶接による変形量を測定し、実機での施工要領に反映します。
今後は、実規模試作で製作したラジアル・プレートを用いてダブル・パンケーキの製作を行い、ダブル・パンケーキの製造技術を確認する予定です。