図11-5 建屋-機器間の接合部連成モデル
図11-6 接合部連成モデルを組み込んだ実プラント全体系解析
原子力施設は多数の機器で構成されており、耐震安全評価では各機器の地震に対するより現実的な応答を評価する必要があります。機器の応答は建屋の応答を入力として評価するため、建屋から接合部を介してどのような波が入力してくるか、すなわち、接合部の伝播特性(伝播と反射)を精緻に知ることが重要となります。この建屋と機器の接合部はコンクリートと金物からなる複合材料であるため、地震波の伝播特性の解明が困難であり、従来は、接合部は固着(完全固定)と仮定されていました。しかしながら、実際には、わずかな変位量ではありますが、大きな入力に対する接合部のずれに関するデータがいくつか報告されており、固着の仮定では接合部における伝播特性を精緻に表すことはできないということが分かってきました。
そこで、従来固着と仮定されている接合部の力-変位関係を実験データを基にモデル化することで、接合部の伝播特性を表現することを試みました。その際、接合部における部分的なずれを含む履歴特性を考慮できるように、接合部に非線形バネを分散配置し、微小部分ごとの力と変位の関係を直接組み込むように工夫しました。図11 -5に示すように、提案した接合部連成モデルを実験結果と比較し、また、接合部の非線形化前後の共振周波数値を確認することで、提案モデルの適用性を確認しました。
一方、本提案モデルの実プラントへの適用性を確認するために、入力波として建屋-機器接合部が非線形化するような大きな地震波を設定し、建屋-機器接合部に接合部連成モデルを組み込んだ原子力施設主冷却系全体の地震応答解析を実施しました。図11 -6に本解析で対象とした高温工学試験研究炉(HTTR)の主冷却系全体モデル、及び解析結果を示します。解析結果より、接合部連成モデルを組み込んだ場合には接合部の非線形化による履歴エネルギー吸収により応答が低減し、接合部連成モデル組み込みの効果を確認することができました。これらにより、接合部連成モデルの機器の耐震裕度評価などへの活用の見通しを得ることができました。
原子力施設の耐震安全評価においては、今後、より詳細な解析が求められることが予想されます。本成果を活用することで、将来的には、原子力施設の地震時挙動の再現性が高まるとともに、国民へ説明性のあるデータを示すことが可能になると期待されます。
本研究は、文部科学省エネルギー対策特別会計委託事業による受託研究「原子力プラント全容解析のための接合部連成モデリングの研究開発(平成19〜20年度)」の成果の一部です。