1-11 公園の除染効果について

−公園における除染試験と空間線量率の低減−

図1-23 除染後の公園と空間線量率測定点

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図1-23 除染後の公園と空間線量率測定点

除染は、遊具は紙タオルによるふき取り、土壌は鋤簾による表土の剥ぎ取りと客土、側溝は高圧水洗浄機やデッキブラシによって除染を実施しました。公園を2 m×2 mのメッシュに区画(写真中の白線)し、除染前後で測定を行いました。

 

表1-3 除染前後における空間線量率の変化

高さ1 m,50 cm,1 cmの除染前後の空間線量率変化を確認しました。除染前は土壌表土の汚染が強いため、地面付近(1 cm高さ)での線量率が高く、地面から離れるほど線量率が低下しました。この関係が除染終了後に逆転したのは、土壌の除染により土壌からの線量率が大きく低下した一方で、除染をしていない周辺からの放射線の影響が残っているからです。

表1-3 除染前後における空間線量率の変化

拡大図(65KB)

 


東京電力福島第一原子力発電所の事故により、生活圏が放射性物質により汚染し、多くの方々が避難若しくは不安な生活を強いられています。特に放射線に対して感受性の強い子どもへの影響が懸念されたことから、子どもたちの外で遊ぶ時間は制限され、校庭や公園では外で遊ぶ姿を見かけることがほとんどなくなりました。校庭除染は進みましたが、公園除染は進まず、除染が望まれていました。しかし、公園の除染方法や除染効果の具体的なデータはなく、空間線量率についても面的除染によってどれほど低下するかというデータもありませんでした。一般の方が除染を実施するには、ホームセンターなどで購入できる機材を用いて、どのように除染できるかを示す必要がありました。

そこで、容易に手に入れられる機材を用いた除染試験を実施しました。本事業では、福島市内の比較的狭く(150 m2)周辺からの放射線影響を受けやすい公園を選び(図1- 23)、遊具,土壌,側溝等を除染しました。除去物は、公園内に孔を掘って埋め、その上から汚染していない土で覆い保管しました。また、覆った土(覆土)の厚みによる放射線遮へい効果も調べました。

除染は高い位置から低い位置への順番に実施するため、遊具,土壌,側溝の順番で行いました。遊具についてはすべり台,ブランコ,鉄棒等は拭き取り、土壌は、深さ3 cmの剥ぎ取りと客土、側溝は、7 MPaの高圧水洗浄を実施しました。

除染の結果(表1-3)、地面付近(1 cm高さ)の空間線量率は、除染前の平均値2.4 μSv/hrから0.4 μSv/hrに減少しました。また、測定器周辺に鉛遮へいを行い測定したところ、地面付近の線量率は更に低減し、0.2 μSv/hrという年間追加被ばく1 mSvの目安である0.23 μSv/hr以下にまで除染されていました。鉛遮へいによる線量率低下は、除染していない周辺からの放射線が鉛により遮へいされたことを意味しています。つまり、より広範囲を除染することで更に線量率を低減できることが分かりました。除去物を埋めた場所では覆土厚さが30 cmで周辺と同程度の線量率にまで低下することを確認しました。

除染作業の動画は原子力機構ホームページ(https://fukushima.jaea.go.jp/fukushima/try/)公開し、福島県除染講習会や環境省除染情報プラザ(http://josen-plaza.env.go.jp/)でも利用されています。さらに、除染技術は環境省除染ガイドラインや内閣府除染技術カタログにも採用され、広く周知されました。