1-12 合理的・効果的除染の計画策定を支援するために

−除染による空間線量率の低減を効率的に予測するソフトウェアの開発−

図1-24 CDEにおける空間線量率の評価計算方法の概念

図1-24 CDEにおける空間線量率の評価計算方法の概念

PHITSコードを用いてあらかじめ評価した線量寄与データベース(ある位置の放射能が及ぼす周辺の空間線量率)と入力した放射能マップを用いて、迅速かつ正確に空間線量率マップを評価します。また、除染係数を入力で与えることにより、除染後の放射能マップを構成して除染後の空間線量率マップを同様に評価します。

 

図1-25 除染計画の検討におけるCDE動作画面例

図1-25 除染計画の検討におけるCDE動作画面例

CDEはExcel上で動作します。グラフィカルなインターフェースを通して、地形の設定,地形ごとの汚染密度や除染方法を設定すれば、除染前後の空間線量率の評価結果が可視化されます。除染方法を変更しながら評価を繰り返すことにより、効率的にケーススタディを行うことができます。

生活環境における空間線量率を低減するためには、除染により土壌等に沈着した放射性セシウムを取り除く必要があります。除染作業を効率的に行うために、除染による空間線量率の低減をあらかじめ評価できるソフトウェアCDE(Calculation system for Decontamination Effect)を開発しました。CDEは、正確な計算を迅速に行うとともに、使いやすさに配慮されています。

正確な計算を短時間で行うために、次の方法を考案しました。空気や土壌による放射線の吸収や散乱を正確に計算可能な三次元粒子・重イオン輸送計算コードPHITSを用いて、ある位置に存在する放射性物質による周辺領域における空間線量率を計算し、これを基に単位放射能あたりの空間線量率を与える線量寄与データベースを計算し準備しました(図1- 24(1))。この線量寄与データベースを、対象領域の放射能マップ(図1- 24(2))に掛け合わせることにより、空間線量率マップを作成します(図1- 24(3))。放射能マップから、その都度PHITSを用いて正確な計算をすると膨大な計算時間を要しますが、あらかじめ評価した線量寄与データベースを用いることで、同じ計算結果が数秒で得られるよう、計算時間を大幅に短縮することに成功しました。

一般のパーソナルコンピュータで計算を行い、計算条件の設定、計算結果の表示操作が簡単に行えるよう、CDEは汎用の表計算ソフトウェアMicrosoft(R) Excel(R)を使い、VBA(Visual Basic for Applications)によりGUIを含めたソフトウェアを作成しました。図1- 25に示すように、計算条件の入力はGUIを用いて行い、空間線量率分布等の計算結果は、カラーマップで分かりやすく表示されます。ファイルの保存、数値のコピー等の基本操作は、Excelの機能を使用し簡単に行うことができます。

CDEは、原子力機構のホームページ上で2011年11月2日から公開されており(https://nsed.jaea.go.jp/josen/)、登録ユーザーに対して無償提供されています。昨年度末での申込数は452件を数え、除染効果評価に活用されています。内閣府の「福島第一原子力発電所事故に係る福島県除染ガイドライン作成調査」事業、「福島第一原子力発電所事故に係る避難区域等における除染実証」事業においても、CDEは除染計画の策定に活用されました。