図4-22 一般化された接続理論によるプラズマ変位
図4-23 解析的分散関係によるRWM安定性解析
那珂核融合研究所において建設が進められているJT-60SA装置では、ITERや原型炉を念頭に置いて、高性能(高ベータ・定常)プラズマの実現を目指しています。高性能プラズマでは、抵抗性壁モード(Resistive Wall Mode:RWM)と呼ばれる不安定性が起きることにより、到達ベータ値が制限されることが問題となります。RWMを安定化するためには、プラズマ回転が有効であることが知られています。しかし、そのメカニズムや、どのような物理量(磁場,温度,密度等)がRWMの安定性に最も影響を与えているのかは、これまで明らかになっていませんでした。
安定性解析において、重要な物理量を抽出する手法に接続理論があります。接続理論では、重要な物理が支配する領域(物理的には共鳴として現れ、これを共鳴面と呼びます)と、共鳴面から離れた領域を漸近的に接続する手法があります。回転がない場合、共鳴が起こる場所が背景磁場により決定されるため、固定された共鳴面の周りの解の振る舞いを知ることにより、漸近接続が可能になります。しかし、回転がある場合、ドップラー効果により共鳴面は分離します。さらに、RWMも有限な周波数を持ちながら回転して共鳴を起こすため、共鳴面の位置は更にシフトします。これら共鳴面の位置は先験的に不明ですので、漸近接続理論は解析不能に陥ります。この困難を解消するために、接続理論を一般化しました。当理論では、共鳴面の存在範囲は有限な領域であることに着目し、共鳴面を含むように有限な厚さを持つ接続領域を用いることで、回転効果を含む接続問題を解くことが可能になりました(図4- 22)。
一般化された接続理論により、RWMの安定性を記述する解析的な分散関係(RWMの波数と、成長率,振動数を関係づける式)の導出に成功しました。得られた分散関係を解析することにより、RWMの安定性に影響を与える物理量を明らかにしました。その物理量は、プラズマの回転の分布と磁場の分布の組合せにより決まります。この物理量が、RWMにどう影響を与えるのかを調べると、回転の変化が磁場の変化より小さい(大きい)場合には、回転がRWMを安定化(不安定化)することが明らかになりました(図4- 23)。この結果から、RWMを安定化する最適な回転や磁場の分布の設計が可能になります。