1-21 原子炉建屋内の汚染の状況を把握する

−コンクリートコアサンプルの分析による汚染の状態評価−

図1-45 コンクリートコアサンプルの外観

図1-45 コンクリートコアサンプルの外観

1F原子炉建屋の床,壁等から採取された直径約10 cmのコンクリートコアサンプルを分析しました。

 

図1-46 放射性物質の浸透深さの分析

図1-46 放射性物質の浸透深さの分析

塗膜の研磨・研磨面のオートラジオグラフィーを繰り返し、放射性物質の浸透深さを評価した結果、1F2号機から採取したサンプルにおいては、放射性物質は約1 mm深さまで不均一に浸透していることが分かりました。

東京電力福島第一原子力発電所(1F)の廃止措置に向けたデブリ取出し等に必要な原子炉建屋内作業での被ばく低減のためには、放射性物質で汚染され高放射線量となっている原子炉建屋内を遠隔で除染する技術を開発する必要があります。原子炉建屋内の遠隔除染を効果的に行うためには、汚染源となる放射性物質の種類,放射性物質の床や壁への浸透状態,汚染の建屋内での分布状況等の汚染の状況を把握することが必要です。特に、放射性物質の浸透状態を評価するためには、原子炉建屋内床,壁等の内部の詳細な分析を行う必要があります。そこで、1F原子炉建屋内床及び壁からコンクリートコアサンプル(図1-45)を採取して原子力機構大洗研究開発センター燃料材料試験施設に輸送し、これまでに培った照射済燃料等の高放射性物質の分析技術を適用して、α/γ線スペクトロメトリー,オートラジオグラフィー等の各種の分析試験を行い、主に放射性物質の床や壁への浸透状態を評価しました。

分析試験の結果、汚染源となる放射性物質の大半は134Cs及び137Csであり、その割合は号機によらず134Cs:137Cs=2:3であること(2012年8月の分析時点における値)、放射性物質は原子炉建屋床の塗膜(厚さ2.5 mm)に最大約1 mm深さまで不均一に浸透していること(図1-46)等を明らかにしました。さらに、放射性物質の浸透深さが、1F1号機及び1F3号機においては約0.5 mmであったのに対して、1F2号機では約1 mmと号機間で異なっていたことから、研磨前のコンクリートコアサンプルの塗膜表面の水や弱酸による洗浄,剥離性の汚染除去剤等による汚染の除去試験を行い、その浸透状態を調べました。その結果、1F2号機においては、塗膜表面の洗浄等のみにより約1 mm深さにまで浸透していた放射性物質の大半が除去されました。本結果は、放射性物質の塗膜内部への浸透が不均一であったことと合わせて考えると、放射性物質は、いずれも均一に放射性物質が浸透すると考えられる塗膜材料内部への浸入や塗膜材料との化学反応等ではなく、塗膜表面に不均一に分布する微小な傷等に入り込んだものであることを示唆していると考えられ、塗膜表面を除去しなくても洗浄等により比較的容易に汚染を除去できる可能性が示されました。

これらの結果は、除染手法選定や除染装置の実証試験条件設定等、遠隔除染計画の策定に反映されました。