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2 次世代原子力システム研究開発

高速増殖炉サイクル技術に関する研究開発

図2-1 高速増殖炉サイクル技術に関する研究開発の概要
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図2-1 高速増殖炉サイクル技術に関する研究開発の概要

国の政策が見直されるまでの当面の取組みとして、安全設計要件の国際標準化と技術基盤の維持を進めており、SDCの構築や安全性に関する試験の国際共同実施の検討など、国際協力を活用しながら研究開発を進めています。

原子力機構では、酸化物燃料を用いたナトリウム(Na)冷却高速増殖炉(FBR)、簡素化ペレット法燃料製造及び先進湿式法再処理を組み合わせた概念を主な対象として、電気事業者の協力も得つつFBRサイクル技術の実用化を目指した研究開発を2010年度まで進めてきました。現在は、東京電力株式会社福島第一原子力発電所 (1F)事故の影響により国の政策の見直しが行われていることを踏まえ、当面は国際協力を活用し1F事故の経験を反映しながら、安全設計要件の国際標準化や技術基盤の維持に必要な取組みに重点化した活動を行っています(図2-1)。2013年5月には、第四世代原子力システム国際フォーラム(GIF)において、私たちが提案した安全設計クライテリア(SDC)が承認されました。本章では、Na冷却炉の特徴を踏まえた安全性・信頼性の向上及び燃料サイクルの技術基盤に関する成果について紹介します。

Japan Sodium-cooled Fast Reactor (JSFR) では、建屋に免震システムを採用すること、異常停止後の冷却に自然循環除熱を積極的に取り入れることで、地震・津波に対する高い耐性を確保しています(トピックス2-1)。

冷却系の流量計測に採用する超音波流量計については、時間・空間的に変動が大きい流れに対しても良好な計測結果が得られる方策を見いだし、実プラントに適用可能な見通しを得ました(トピックス2-2)。

炉容器内構造物の目視・体積検査を目的としたNa中目視検査装置については、装置性能に影響するセンサ表面とNaの濡れ性に関して、現行の改善方策の妥当性を示すデータを得ました(トピックス2-3)。

JSFRの構造材料として採用する316FR鋼と改良9Cr-1Mo鋼については、材料試験データの評価結果に基づき強度特性の定式化を行い、より信頼性の高い設計を可能としました(トピックス2-4)。

蒸気発生器の安全性や保護の観点から重要なNa-水反応については、仏国CEAとの共同研究により試験を実施し、伝熱管破損時に発生する反応ジェットと伝熱管耐性への影響を評価しました(トピックス2-5)。

燃料サイクルの技術基盤に関しては、ウラン・プルトニウム混合酸化物 (MOX) 燃料の熱伝導率などの物性値を大きく変化させる酸素と金属の元素数比を自在に制御することが可能となり、燃料製造や照射挙動評価に適用できるようになりました(トピックス2-6)。