図2-11 蒸気発生器とNa/水反応ジェット
図2-12 反応ジェットの様相と伝熱管 (隣接管) の損傷
高速増殖炉では、蒸気発生器にてナトリウム(Na)の熱を水に伝え蒸気を作り、タービン・発電機を駆動するシステムとなっています。蒸気発生器の内部には、多数の伝熱管が組み込まれており、管の外側をNaが、内側を水・蒸気が流れて熱交換しています(図2-11)。
この伝熱管が破損した場合、高圧の水・蒸気がNa中に噴出してNaと水が反応し、これに伴い高温腐食性の反応ジェットが生成されます。この反応ジェットが近傍の伝熱管(隣接管)に衝突し、そのまま放置されると、隣接管に損傷を与えます(図2-11(右))。これを防止するために、Na側の圧力の変化や反応に伴って発生する水素濃度を常時監視し、Na/水反応が発生した場合には、直ちに伝熱管内の水・蒸気を抜いて、反応ジェットを終息させ、伝熱管(隣接管)の破損を防止する仕組みになっています。
この仕組みを確実なものとするために、反応ジェットに対する伝熱管の耐性を調べることが必要です。伝熱管の耐性は、水・蒸気の噴出量,隣接管までの距離,Na温度に依存します。したがってこれらの影響を把握するためには、上述の種々の条件を変えて伝熱管耐性データを取得しなければなりません。日本と仏国では、これまでそれぞれ単独で試験を行い、耐性データを蓄積してきました。しかし、このたび両国で協力し役割分担して試験することで、効率的なデータ取得を行うこととしました。
試験装置は、私たちのNa/水反応試験装置を用いました。この装置は、蒸気発生器の内部と同じ環境(〜500 ℃, 〜18 MPa)を作り出し、様々な条件で試験できます。一方、伝熱管は、仏国CEAで製作し、この試験装置のNa容器内に設置しました。そして、ノズルから水・蒸気を伝熱管に噴射し、反応ジェットにより伝熱管を貫通破損させ、貫通するまでの時間を計ることで伝熱管の耐性を調べました。また、伝熱管の損傷形状や反応ジェットの温度分布から、反応ジェットの形態も評価しました。図2-12は一例として、異なる距離での反応ジェットの様相と、伝熱管の損傷状況の関係を示したものです。
この共同研究においては、今後も数年間にわたって試験を継続する予定です。実験結果は伝熱管の耐性データベースの蓄積・拡充に当てられ、両国の蒸気発生器の安全の向上に反映していきます。