3-2 瑞浪超深地層研究所における岩盤応力の評価

−測定が困難な条件下における評価事例−

図3-7 ボーリング孔内の湧水に対応した測定ツールと測定手順

図3-7 ボーリング孔内の湧水に対応した測定ツールと測定手順

ボーリング孔の掘削サイズ(HQサイズ:φ100 mm)より一回り大きいサイズのケーシングで湧水がひずみゲージセルの部分に回らないように処置します。

 

図3-8 岩盤応力測定の状況

図3-8 岩盤応力測定の状況

深度300 mの坑道

 

図3-9 ボーリング孔内の湧水状況

図3-9 ボーリング孔内の湧水状況

ボーリング孔の孔径:φ100 mm

高レベル放射性廃棄物の地層処分では、地下深部の数km四方の領域に多数の坑道が掘削されます。建設,操業,閉鎖時の坑道の安定性の確保や坑道近傍の岩盤物性が変化する領域の大きさやその変化量を最小化するためには坑道周辺の岩盤応力の状態を評価する必要があります。

岩盤応力の測定方法として、地上からの調査ではボーリング孔を利用した水圧破砕法の実績が多いものの、坑道内では完全な三次元応力状態が把握できることから応力解放法が主流です。地盤工学会では、2009年に応力解放法の一種の円錐孔底ひずみ法の規格・基準を定めました。しかしながら、この方法はひずみゲージセルを岩盤に接着させるため、ボーリング孔内に湧水がある場合には測定を断念するケースがあります。湧水があるボーリング孔での測定のための装置開発や試験が行われていますが、事例は少ないのが現状です。さらに、円錐の肉厚が薄い部分ではオーバーコアリングの際にコアディスキングが発生し、通常の方法では応力状態を評価できない例もあります。

私たちはこのような課題を解決するため、図3-7に示す孔内の湧水対策ツールを開発して瑞浪超深地層研究所の地表からの深度200 mと300 mの花崗岩に掘削された坑道内において円錐孔底ひずみ法による岩盤応力測定を実施しました(図3-8,図3-9)。本調査では、何点かの測定においてコアディスキングが発生したことから、数値解析を実施して、コアディスキングの発生状況を検討しました。測定や検討の結果は以下のとおりです。

(1) 開発した湧水対策ツールにより、すべての測定において湧水が原因となる不具合が発生することなく測定を実施することができたので、本装置の有効性を確認することができました。

(2) 円錐孔底ひずみ法のオーバーコアリングを模擬した数値解析の結果、コアディスキングが発生するメカニズムとしては、円錐孔底の稜線の部分に引張応力が作用し、内在するマイクロクラック等の弱部からの割れ目の進展が考えられます。

(3) コアディスキングを低減するための今後の対策として、広域応力場などから想定される最大主応力の方向とボーリング孔軸の関係を事前に検討したうえで、測定レイアウトを決めることが重要です。



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