図4-13 核融合材料中性子照射施設の構成
図4-14 ループアンテナの挿入距離及び角度に対する高周波結合特性の測定結果
図4-15 三次元電磁界解析による磁界分布
図4-16 ループアンテナ挿入によるRFQの反射係数
図4-17 我が国の先端技術により製作に成功したループアンテナ先端部
核融合炉の実用化には、14 MeVの中性子による核融合炉材料の健全性評価が必要不可欠です。このためにBA活動のもと、日本と欧州連合が共同でInternational Fusion Materials Irradiation Facility (IFMIF)計画を進めています。IFMIFでは重陽子(d)とリチウム原子(Li)との反応で作られる中性子を用います。このためには重陽子イオンビームを加速し、液体リチウムに入射する加速器(図4-13)の実現が鍵です。この加速器は125 mAの二つのビームラインを用いて加速します。しかも定常運転が要求されることから、ライナックの分野では世界最大電流となる試みです。加速器は100 keV出力の入射器,100 keVから5 MeVまで加速する高周波四重極加速器 (RFQ) 及び5 MeVから40 MeVまで加速する超伝導ライナックから構成されます。原子力機構では、この構成の中で定常運転・大電流加速の実現を左右するRFQの開発研究を行っています。このRFQでは定常運転で125 mAの大電流を加速するために、周波数が175 MHzの高周波電力1.4 MWを入射する必要があります。安定かつ定常的に高周波電力を供給するためには、高周波電力を結合するためのループアンテナの熱変形を軽減して、その形状による運転モードの変移を抑制することが必要です。このためには小さなループアンテナで挿入距離を抑えた高周波設計を行い、いかに高周波特性を定常的に維持できるかが開発の鍵となります。
今回、ループアンテナの熱負荷を軽減するために、実機大寸法のRFQモックアップモジュールによる高精度の高周波特性評価(図4-14)と三次元電磁界解析(図4-15,図4-16)を行い、アンテナの挿入距離の最適化に成功しました。更に世界で初めてループアンテナ内部に冷却チャンネルを設けて積極的に冷却する工学設計を行い、ループアンテナの曲面に均等な冷却チャンネルを設けるために均一な超微小砂を応用するなど我が国の先端技術によりこの製作に成功しました (図4-17)。これらの結果、世界に先駆けて定常化高周波結合系の開発に目処をつけました。