図4-23 JT-60SA超伝導コイルシステムとCSの接続部
図4-24 接続方式の比較
サテライト・トカマク(JT-60SA)では、高性能プラズマの長時間維持の実現を目標としており、そのためには、装置コイルの超伝導化が不可欠です。その超伝導コイルは、ITERに次ぐ世界最大級のものであり、D型形状をした18個のトロイダル磁場(TF)コイル,装置中心に縦積みされた四つの中心ソレノイド(CS),そしてTFコイルを鉢巻状に取り囲む六つの平衡磁場(EF)コイルにより構成されます(図4-23)。これらのコイルの製作は、日本と欧州が分担して行っており、我が国がCS・EFコイル用超伝導導体製作とCS・EFコイル製作を、イタリアがTFコイル用超伝導導体製作を、フランスとイタリアがTFコイル製作を担当しています。
超伝導コイルの製作には、小さなものでも3 km以上の超伝導導体が使用されます。そこで、超伝導導体をコイル状に巻線後、超伝導導体同士を銅などの常伝導導体を介して接続し、一つのコイルにする必要があります。接続部の電気抵抗による発熱が大きいと、接続部付近の超伝導状態が維持できず、冷凍能力の増強が必要となります。そのため接続部の電気抵抗は5 nΩ以下とする必要があります。EFコイルで採用した従来の接続方式(図4-24左)は、超伝導ケーブル同士を重ね合せて、はんだで接続する方式でした。しかし、プラズマ電流を生成することを目的とするCSでは、図4-23に示すように限られたスペースの中でコイル直径を可能な限り大きくする必要がありました。そこで、超伝導ケーブル同士を突合せでコンパクトに接続する方式(図4-24右)を開発しました。これは、ITER CSモデルコイルで開発した接続手法を改良し、コイル形状に巻かれた超伝導導体同士を突合せ接続する装置を用いて、コイル巻線内部に接続部を組み込めるようにしたものです。すなわち、コンパクトな接続部を実現するために、真空下で突合せ接続面に30 MPaの圧力を加えた状態で650 ℃程度に加熱し、接続面を拡散接合する手法を開発しました。本方式で製作した接続サンプルの通電試験を行い、強磁場・極低温下(2 T,7 K)及び高電流(20 kA)での接続部使用条件において、接続電気抵抗の要求値である5 nΩ以下を十分満足する2 nΩを達成しました。この結果より、JT-60SAのCS実機の製作に着手できる見通しを得ました。