図6-7 誘導結合プラズマ質量分析装置
図6-8 従来手法と本手法で測定した結果との比較
(サマリウム-150の例)
使用済燃料に含まれる様々な同位体の量は、燃料や廃棄物の性質を評価するための基本的データです。その測定技術の確立を目的とし、BWR用9×9燃料集合体を対象に核分裂生成核種(FP)量を測定するための試験を2008年度から約4年間実施しました。この試験は放射性物質の取扱いや、様々な元素の化学分離にかかわる豊富な知識も必要となるため、多くの関係部署が協力して実施しました。
従来のFP核種を対象とした測定では、γ線測定が利用される場合が多かったのですが、対象核種が安定な場合、その手法は利用できません。イオン交換分離と表面電離型質量分析装置(TIMS)を組み合わせる測定が行われることもありますが、その手法は測定精度が高い反面、試料の取扱量が比較的多く作業者の被ばくに注意する必要がありました。さらに、希土類元素(REE)の測定では同じ質量数を有する同位体が多く、相互影響を排除するための化学分離と測定が複雑になります。そのため、多数の試料の測定や測定誤差を低減するために同一試料を複数回測定することが難しい状況でした。
そこで私たちは、より少ない使用済燃料の溶解液を用い、簡便かつ迅速に必要なFP核種の量を測定できる方法を確立するため、抽出クロマトグラフィーによるREEの相互分離と高感度な誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)(図6-7)を組み合わせた、効率的なFP核種測定手法について検討しました。そして、FP核種中のREEを相互分離し、分離液中のREE同位体比をICP-MSで測定し、同位体希釈法と呼ばれる手法で着目するFPを定量する分析法を確立しました。
これにより、ネオジム,サマリウム(Sm)及びガドリニウムをほぼ定量的に分離でき、その測定結果はTIMSを利用した従来手法の測定結果と良く一致することを確認しました(図6-8)。本手法では、サンプルのウラン重量が10 μg以下と極微量で測定可能であるため測定者の被ばく管理上の問題が少なく、分離から測定にかかる日数も5日程度で従来手法より効率的です。これにより、試料数や測定回数を増やすことで、より信頼性のあるデータを得ることが可能です。
今後、REE以外のFPの分離・測定を実施するとともに、同様の照射後試験に本手法を適用していく予定です。
本研究は、独立行政法人原子力安全基盤機構からの受託研究「平成20〜23年度軽水炉燃焼燃料の核分裂生成核種組成測定試験」の成果の一部です。