図2-5 開発した不確かさ及び感度解析手法の流れ
図2-6 MELCORコードを用いた不確かさ解析の結果
図2-7 代替統計モデルの検証及び感度解析の結果
東京電力福島第一原子力発電所事故のようなシビアアクシデント(SA)では、原子炉容器内外において複雑で多様な物理・化学現象が発生します。一般的に、SA進展の解析には、このような現象をモデル化している解析コードを用いますが、現象の理解が不十分であること等に起因して、出力値には大きな不確かさが含まれます。不確かさ解析により不確かさの程度を把握し、感度解析により不確かさの支配的要因を同定することは、出力値の信頼性を高めるとともに、SA解析コードの高度化を効果的・効率的に進める上で非常に重要です。
本研究において開発した解析手法を図2-5に示します。四つのステップを経て出力値の不確かさ分布と不確かさの支配因子を評価します。一例として、米国のSA進展解析コードMELCORを用いたソースターム(環境中に放出される放射性物質の量や放出のタイミング)に関する不確かさ解析を行いました。図2-6に示す解析結果から、初期炉内内蔵量に対する環境へのヨウ化セシウム(CsI)放出割合はほとんど0から0.06程度の範囲にあり、ソースターム解析から得られる出力値には、この程度の不確かさを含むことが示唆されます。
膨大な解析ケースを要する感度解析で利用する代替統計モデルは、図2-6のような複雑な分布にも対応できる統計手法を用いて構築しました。代替統計モデルを用いた約16000ケースの感度解析から得られた結果の例を代替統計モデルの検証結果と合わせて図2-7に示します。重要度指標の比較から、パラメータ(A)被覆管破損が出力値の不確かさに最も大きく影響を及ぼすことが分かりました。
上記の解析を通じて、SA時のソースターム評価に本手法が適用できることを確認しました。今後、ヨウ素の化学反応モデルを有しCsI以外の様々なヨウ素の化学形を考慮できる原子力機構のSA進展解析コードTHALES2と連携して、多様なSAシナリオにおけるソースタームの不確かさを評価するとともに、感度解析の結果を参考にして不確かさの低減を図っていきます。