7-2 高速炉の耐震性評価技術の高度化を目指して

−巨大地震時における高速炉配管の挙動の解明−

図7-5 エルボの終局強度確認試験の様子

図7-5 エルボの終局強度確認試験の様子

振動台により地震波を再現し、地震時に発生する慣性力をエルボに与える試験を実施しました。

 

図7-6 (a)試験後のエルボ横腹部の状態と(b)有限要素法によるシミュレーション解析結果
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図7-6 (a)試験後のエルボ横腹部の状態と(b)有限要素法によるシミュレーション解析結果

(a)試験後の観察では、エルボの軸に沿って、き裂の貫通が見られます。(b)有限要素法解析によるひずみ集中位置は、き裂貫通位置と良く一致することが確認できます。

 

図7-7 設計疲労評価結果

図7-7 設計疲労評価結果

試験に対して実施した設計疲労評価結果を示しています。実際に破損したときのUf は疲労制限1を超過する結果となり、現行設計には、大きな余裕が含まれていることを確認できます。

 


設計条件を越える過酷な地震荷重を想定した場合の最終的な振る舞いを把握すること、また、現行設計が終局強度と比べて、どの程度の余裕を見込んでいるのかを明確にすることは、耐震健全性を確実なものにするという観点から重要です。本研究では、高速炉配管を対象として、設計で想定する地震荷重を超える過酷な入力条件下での挙動を解明すべく、配管系の中で応力が集中するエルボを代表として要素試験体の振動試験を実施しています。

本試験では、エルボの一端を振動台に固定し、もう一方の端部には慣性力を得るために錘を設置することで、振動台加振時に錘部に発生する地震慣性力による曲げをエルボに与えます(図7-5)。その結果、設計で想定される地震レベルでは、エルボは健全な状態に保たれることを確認しました。その後、エルボの終局的な挙動を確認するために、現実には起こり得ない地震レベルまで振幅を増大させ、繰り返し加振した結果、エルボ横腹付近において、軸方向のき裂貫通が生じました(図7-6(a))。これにより、設計地震条件を大きく超える地震が発生した場合のエルボの最終的な挙動は配管機能を即座に喪失するような不安定なものではなく、き裂が徐々に進展・貫通する疲労破壊であることを確認しました。また、有限要素法による試験のシミュレーション解析を行い、エルボが破損するまでの挙動が再現できることを確認しました(図7-6(b))。

耐震設計の裕度を定量化するため、配管設計時に行われる疲労評価を本試験に対して実施し、許容値と比較しました。試験体が破損に至ったときの疲労損傷係数(構造物の疲労損傷度合いを示す値で、1になったときを疲労と定義)は許容値1を大きく上回る結果となりました(図7-7)。この結果は、たとえ設計評価上壊れると判定されても終局強度までには余裕があることを示しており、既存配管は極めて大きな保守性を見込んだ手法により設計されていることを確認しました。