1-17 台風や豪雨時の放射性セシウム流出量を予測する

−複数の流域を対象とした放射性セシウム流出量解析−

図1-35 1F近傍の5河川流域(小高川、請戸川、前田川、熊川、富岡川)における137Cs沈着量の分布(第2次航空機モニタリングデータ、2011年5月)

図1-35 1F近傍の5河川流域(小高川、請戸川、前田川、熊川、富岡川)における137Cs沈着量の分布(第2次航空機モニタリングデータ、2011年5月)

放射性Csの沈着量は流域ごとに異なります。河川流域によってはダムが存在し、放射性Csを吸着した土砂の流出を抑制します。主要なダムの有無です(小高川流域:無、請戸川流域:有、前田川流域:無、熊川流域:有、富岡川流域:有)。図の黒太線は流域の境界を示します。

 

図1-36 台風等の豪雨時における5河川流域からの137Csの(a)流出量と(b)流出比

図1-36 台風等の豪雨時における5河川流域からの137Csの(a)流出量と(b)流出比

放射性Csの流出量と流出比は、各流域の降水量や初期沈着量、ダムの有無及び土地利用等に応じて異なります。

 


東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故によって地表に沈着した放射性セシウム(Cs)は、粘土鉱物を含む土壌粒子に強く吸着する特性があり、今なお土壌表層にその大部分が残っています。そのため、台風等の豪雨時に放射性Csの一部が水・土砂とともに川や海へ流出すると考えられますが、その量や流出の特性が分かれば今後の放射性Cs流出量の予測が可能になると考えられます。

そこで本研究では、土砂輸送を考慮した既存の水循環流域解析モデルを拡張し、放射性Cs輸送を加えたモデルを構築しました。このモデルを用いて、多くの放射性Csが沈着した1F近傍の5河川流域(図1-35)を対象に、台風等の豪雨時における水・土砂・放射性Csの流出挙動を把握するための数値解析を行いました。

数値解析では、河川流域ごとに、放射性Csの流出量と流出比(各河川流域の初期沈着量に対する流出量の割合)を求めました。流出量と流出比は、降水量とともに、河川流域における初期沈着量、ダムの有無及び土地利用に応じた土砂供給量の違いに依存して異なると考えられます。そのため、それらを考慮した解析を行いました。

その結果、請戸川流域では、流域の初期沈着量が多いために放射性Csの流出量は大きいものの、流出比は小さくなる結果が得られました(図1-36)。上流からの土砂をせき止める効果のあるダムの存在は、土壌粒子に付着した放射性Csの下流への流出を抑制します。さらに、森林は地表で水流が発生しにくいため、土砂の流出量が少なくなります。これらのことから、森林が大部分を占めるダム湖の上流域に多くの放射性Csが存在する請戸川流域では、流出が抑制され、結果として流出比が小さくなります。前田川流域ではダムが存在せず、土砂の流出量が多い水田の分布域で沈着量が多いため、流出比が大きいことが分かりました。

今後、本解析法の検証と改良を進め、より詳細なスケールの解析を行い、放射性Cs流出箇所の推測に役立てていきます。