3-3 ハイパー核をγ線で見る

−中性子星に潜む「奇妙さ」を暴けるか−

図3-6 通常核とΛハイパー核

図3-6 通常核とΛハイパー核

(a)は陽子と中性子のみからできている普通の原子核、(b)はそれにΛ粒子を加えたハイパー核を表します。

 

図3-7 本研究に使用した実験装置

拡大図(1.31MB)

図3-7 本研究に使用した実験装置

J-PARCで得られたK-中間子のビームを液体四フッ化メタン標的に入射して、ハイパー核を生成します。それと同時に、標的周りに設置したγ線検出器によって、ハイパー核から放出されるγ線を測定します。

 

図3-8 測定されたγ線スペクトル

拡大図(46kB)

図3-8 測定されたγ線スペクトル

Λ19Fハイパー核からのγ線を四つ観測、同定することに成功しました。エネルギーの誤差が二つありますが、一つ目が統計誤差、二つ目が系統誤差です。ほかにもピークが何本か見えていますが、Λ19Fが生成されていない場合でも見えているなどの理由からバックグラウンドだということが分かっています。

 


通常の原子核は、陽子と中性子という2種類の構成要素からできています(図3-6(a))。クォークのレベルで見ると、どちらもアップクォークとダウンクォークという2種類のクォークからできていますが、クォークは全部で6種類あることが知られています。では、アップ/ダウンクォークを別のクォーク、例えばストレンジクォークに変えた場合、原子核はどのように変わるでしょうか?このような特別な原子核をハイパー核と呼びますが、その中でもラムダ(Λ)粒子を含むハイパー核(図3-6(b))について、これまでも盛んな研究がなされてきました。

ハイパー核を研究する動機はいろいろありますが、そのうちの一つとして、中性子星が挙げられます。中性子星の内部にはΛ粒子が天然に存在していると考えられているので、中性子星の性質を理解するにはΛハイパー核の性質を調べることが必要です。中性子星は巨大なハイパー核なので、その性質を知るにはなるべく大きなハイパー核を調べたいのですが、これまでの研究は技術的な理由から主に軽いハイパー核を調べるものでした。

私たちは、図3-7のJ-PARCハドロン実験施設で行われた実験で、これまで研究されたよりも重いハイパー核であるフッ素19Λハイパー核(Λ19F)を作って、そこから出て来る光(γ線)を観測することに成功しました(図3-8)。その結果は、私たちが以前に測定した軽いハイパー核(ヘリウム4Λハイパー核(Λ4He)やリチウム7Λハイパー核(Λ7Li))のデータを使って理論的に計算した予想値と良く一致していました。これは、これまでに得られた知識から、軽いハイパー核だけでなくより重いハイパー核の構造も十分に理解し得ることを示しています。

今回のような研究をさらに進め、より重いハイパー核の構造を精密に調べることで、中性子星の内部構造という未解決問題に決着をつけることができると期待されています。

本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(A)(No.15H02079)「ハイパー核ガンマ線分光で解明するΛN相互作用の荷電対称性」の助成を受けたものです。



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