図3-6 通常核とΛハイパー核
図3-7 本研究に使用した実験装置
図3-8 測定されたγ線スペクトル
通常の原子核は、陽子と中性子という2種類の構成要素からできています(図3-6(a))。クォークのレベルで見ると、どちらもアップクォークとダウンクォークという2種類のクォークからできていますが、クォークは全部で6種類あることが知られています。では、アップ/ダウンクォークを別のクォーク、例えばストレンジクォークに変えた場合、原子核はどのように変わるでしょうか?このような特別な原子核をハイパー核と呼びますが、その中でもラムダ(Λ)粒子を含むハイパー核(図3-6(b))について、これまでも盛んな研究がなされてきました。
ハイパー核を研究する動機はいろいろありますが、そのうちの一つとして、中性子星が挙げられます。中性子星の内部にはΛ粒子が天然に存在していると考えられているので、中性子星の性質を理解するにはΛハイパー核の性質を調べることが必要です。中性子星は巨大なハイパー核なので、その性質を知るにはなるべく大きなハイパー核を調べたいのですが、これまでの研究は技術的な理由から主に軽いハイパー核を調べるものでした。
私たちは、図3-7のJ-PARCハドロン実験施設で行われた実験で、これまで研究されたよりも重いハイパー核であるフッ素19Λハイパー核(
今回のような研究をさらに進め、より重いハイパー核の構造を精密に調べることで、中性子星の内部構造という未解決問題に決着をつけることができると期待されています。
本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(A)(No.15H02079)「ハイパー核ガンマ線分光で解明するΛN相互作用の荷電対称性」の助成を受けたものです。