8-11 低放射性廃液の安定化に向けた技術開発

−炭酸塩を含む低放射性廃液のセメント固化−

図8-27 実規模混練装置

図8-27 実規模混練装置

実機と同じ200 Lドラム缶サイズのセメント固化体を混練し、各種物性データを取得します。また、長期保管したのち、圧縮強度を測定し、8 MPa以上であることを確認します。

 

図8-28 OPCに対するBFS混合率と圧縮強度の変化

図8-28 OPCに対するBFS混合率と圧縮強度の変化

BFS混合率が高くなるにつれて圧縮強度の増加が確認されました。また、BFS 95%以降の場合、固化日数を要するため、運転に適した固化日数と流動性等が得られる混合セメント(BFS:OPC=9:1)をLWTFで採用する予定です。

 

図8-29 (a)混合セメントにおけるコア圧縮強度及び(b)長期保管時における圧縮強度の変化率

拡大図(147kB)

図8-29 (a)混合セメントにおけるコア圧縮強度及び(b)長期保管時における圧縮強度の変化率

(a)水セメント比(0.65〜0.85)、塩充てん率(15〜23wt%)の広い範囲においても、8 MPa以上の圧縮強度が得られました。(b)また、線内(①〜③)の試料に対して、長期的な圧縮強度の増加が確認されました。

 


低放射性廃棄物処理技術開発施設(LWTF)では、再処理施設で発生した低放射性濃縮廃液やリン酸廃液をセメント固化する計画です。このうち低放射性濃縮廃液については、核種分離(共沈・限外ろ過、Cs・Sr吸着)を実施し、スラリ廃液と硝酸塩廃液に分離した上で、硝酸塩廃液については、硝酸根分解処理によって炭酸塩廃液とし、インドラムミキシング方式によるセメント固化を計画しています。硝酸根分解処理に伴い発生する炭酸塩廃液は、セメント固化を促進する作用があり、一般的にセメント固化に使用されている普通ポルトランドセメント(OPC)は、硬化が早過ぎるために適用が困難でした。そのため、新たなセメント材を選定し、固化条件を調べる必要があります。本報は、セメント固化設備をLWTFに設置するため、水セメント比や塩充てん率(固化した際の固化体に含まれる塩の割合)などの各種条件における固化可能範囲や長期保管時の圧縮強度等について、実規模混練装置(図8-27)を用いて調査しました。セメント材の選定では、アルカリと反応することで緩やかに硬化する高炉スラグ微粉末(BFS)に着目し、OPCとBFSの混合セメントを用いて試験を行ったところ、BFSの割合を増加させることで、圧縮強度や流動性が増加することが確認されました(図8-28)。その結果を踏まえて、BFS:OPCが9:1となる混合セメントを用いて、実規模混練を行いました。LWTFでは、水と炭酸塩の割合が変動することが予想されることから、固化性状に大きく係る水セメント比及び塩充てん率をパラメータとして、固化可能範囲の検討もあわせて行いました(図8-29(a))。その結果、水セメント比:0.65〜0.85、塩充てん率:15〜23wt%とすることで、目標である圧縮強度(8 MPa以上)を満たすことが確認され、②を中心とした線枠内(LWTFの運転上の誤差範囲)では、水と炭酸塩の割合の変動を踏まえても十分に固化が可能であることを確認しました。さらに、得られた固化体の長期の圧縮強度の変化について調査を行い、長期的には強度が増加する傾向があることを確認しました(図8-29(b))。これは、セメント材に含まれるBFSが緩やかに反応することで、圧縮強度が長期的に増加するためと考えられます。また、長期保管後にひびなどの異変が見られないことから、固化体は膨張も収縮もせず安定していることを確認しました。

これらの試験結果は、セメント固化設備をLWTFに設置するための設計に役立てられます。今後もセメント固化試験を継続し、より広い固化可能範囲の把握及び運転条件の最適化を目指します。