1-11 除染した後の線量率はどう変化するか

−長期モニタリングデータから明らかとなった土地利用形態の影響−

図1-22 箱ひげ図による放射性Csの放射性崩壊による減衰を差し引いた空間線量率の減少速度の分布

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図1-22 箱ひげ図による放射性Csの放射性崩壊による減衰を差し引いた空間線量率の減少速度の分布

全ての地点の空間線量率は、放射性Csの放射性崩壊による減衰以上に減少しました。この減少速度は、(a)土壌面よりもアスファルト舗装面の方が大きいこと、(b)森林の中で小さく、森林からの距離が離れるにつれて大きくなることが分かりました。

 


東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故後、1F周辺では、住民の外部被ばく線量を低減するための除染が行われてきました。除染した後の空間線量率の減少傾向は、帰還した住民の将来の外部被ばく線量の推定や低減対策のための重要な情報になります。1F事故後、様々なモニタリングが実施され1F周辺の広い範囲にわたって空間線量率の減少傾向が評価されています。それらの結果から、定性的には、住宅地や水田では空間線量率の減少が早く、森林では減少が遅いなど、土地利用の違いが空間線量率の減少に大きく影響することが分かってきています。しかし、これらの調査では、除染・未除染の区別、避難指示区域(帰還困難区域及び居住制限区域)内外の区別がなされておらず、人間活動の影響について定量的な評価がなされていませんでした。そこで、本研究では、人間活動の限られた避難指示区域内の除染が行われた場所に焦点を当て、空間線量率の減少傾向を評価しました。

調査は、2012年11月から2016年11月までの4年間、除染済みの6ヶ所のフィールド(川俣町、浪江町、川内村、富岡町、大熊町下野上、大熊町夫沢)で行いました。それらのフィールドにおいて、地表1 m高さの空間線量率を1ヶ月〜3ヶ月ごとに計163ヶ所で定期的に測定し、調査期間中の放射性セシウム(134Cs、137Cs)の放射性崩壊による減衰を差し引いた空間線量率の減少速度を算出しました。算出した減少速度は0.0058〜0.16(year−1)の範囲に分布し、放射性Csの放射性崩壊による減衰以上に空間線量率が減少したことが明らかとなりました。

これらの結果について、163ヶ所の測定場所を地表面の状況や森林からの距離等による特徴に弁別し、詳細な考察を行いました。図1-22(a)は、地表面の違いが減少速度に及ぼす影響を調べるために、土壌面とアスファルト舗装面に分けて減少速度の分布を示したものです。この図から、空間線量率は、土壌面、アスファルト舗装面ともに放射性Csの放射性崩壊による減衰以上に減少すること、土壌面よりもアスファルト舗装面の方が早く減少する傾向にあることが分かりました。この結果は、1F事故後の他の調査結果やチェルノブイリ原子力発電所事故後の調査結果と整合的です。その原因としては、土壌面では地中に放射性Csが移動していること、アスファルト舗装面ではそれ以上に降雨により水平方向に流出したことが考えられます。

図1-22(b)は、森林の中、森林樹木の近傍、森林が周囲に無い開けた場所の減少速度の分布を示したものです。減少速度は森林の中で最も小さく、森林からの距離が離れるにつれて大きくなることが分かりました。本調査の対象の森林は落葉広葉樹と常緑針葉樹の混合林です。1F事故後、放射性Csは常緑針葉樹の樹冠に沈着したと考えられます。その後、樹冠の放射性Csは徐々に林床へ移動し、これが追加的な放射線源となり森林の中の減少速度が比較的小さくなったと考えられます。一方、開けた場所では降雨の影響を直接受け、放射性Csの地中への移動が促進し減少速度が大きくなったと考えられます。

本研究の成果は、除染後に帰還した住民の外部被ばく線量の中長期的な将来予測に役立つ重要な知見となります。

(中間 茂雄)