図1-1 福島研究開発部門の研究開発拠点(2020.4.1改組)
東京電力福島第一原子力発電所(1F)の事故以来、原子力機構は日本で唯一の原子力に関する総合的な研究開発機関として、福島研究開発部門を中核に1Fの廃止措置及び福島の環境回復に係る研究開発に取り組んでいます。当部門の所掌する研究開発拠点を図1-1に示します。
図1–1に示した廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)の国際共同研究棟、楢葉遠隔技術開発センター(NARREC)の研究管理棟及び試験棟、大熊分析・研究センターの施設管理棟及び第1棟(現在建設中)は、福島イノベーション・コースト構想の一翼を担う廃炉関連の施設であり、研究開発を通じて1Fの廃止措置に貢献しています。また、福島県が整備した福島県環境創造センター(三春町)及び福島県環境放射線センター(南相馬市)では、福島県及び国立環境研究所と連携して環境回復に関する研究開発等に取り組んでいます。
廃止措置に向けた研究では、燃料デブリの取出しに関連した研究として、燃料デブリからのウランの溶出挙動や燃料デブリ中の元素分布に関する研究(トピックス1-1、1-2)、炉内の燃料デブリをその場で分析する遠隔分析技術の開発(トピックス1-3)などに取り組んでいます。また、損傷した1F原子炉建屋内は、現在でも放射線量が高いため、遠隔機器を用いた作業が中心となります。そこで、遠隔操作機器の動作性を検証するため、現場環境を模擬した試験フィールドを整備(トピックス1-4)するほか、遠隔機器の操作者に対して、現場状況の理解を助ける映像解析技術の開発(トピックス1-5)にも取り組んでいます。また、放射線管理の観点では、主要な放射線源となるセシウムの原子炉建屋内の分布と存在状態の推定(トピックス1-6)を行っています。さらに、放射性廃棄物の保管時の安全性の評価として、廃棄体中の水の放射線分解による水素発生挙動の解明(トピックス1-7)などにも取り組んでいます。さらに、損傷した炉内状況の推定や安全研究に反映するため、1Fの事故進展を探る研究(トピックス1-8)も国際機関と共同して行っています。
環境回復に向けた研究では、事故により放出された放射性物質が環境中でどのように移動していくのかを解明・予測する研究(トピックス1-9、1-10、1-11、1-12、1-13、1-14、1-15)を数多く行っています。また、事故直後の線量率の再評価から、チェルノブイリ原子力発電所事故との比較検討(トピックス1-16)を行い、福島における被ばく線量の遡及的な推定に貢献しています。さらに、1Fサイト外の放射性物質の存在状況を分布マップにまとめ、インターネットを通じて公開(トピックス1-17)しています。また、住民の外部被ばく線量の評価(トピックス1-18)を実施し、帰還困難区域の解除に向けた基本情報として提供しています。
福島研究開発部門では、今後も国内外の英知を結集し、1Fの廃止措置や環境回復のための研究開発を進め、得られた成果を国内外に積極的に発信していきます。また、地域の企業や研究・教育機関などとのネットワークの構築を進めることで、地域産業の活性化や人材育成につなげ、福島復興に貢献していきます。