7-2 自然対流により炉心の崩壊熱を確実に除去

−浸漬型直接炉内冷却器による炉心冷却試験と冷却性能予測技術の開発−

図7-5 Na試験装置(PLANDTL-2)の試験体と炉容器内に設置した冷却器による自然対流崩壊熱除去システムのイメージ

図7-5 Na試験装置(PLANDTL-2)の試験体と炉容器内に設置した冷却器による自然対流崩壊熱除去システムのイメージ

(a)PLANDTL-2は、従来の大型ナトリウム冷却高速炉の1/5縮尺規模の試験体を有し、上部プレナム、炉心部、浸漬型直接炉内冷却器(浸漬型DHX)及び炉上部機構など主要な構成機器を模擬し、(b)直接炉心冷却系による炉心冷却の様子を工学規模で把握可能です。

 

図7-6 PLANDTL-2試験で得られたDHX除熱時の温度分布

図7-6 PLANDTL-2試験で得られたDHX除熱時の温度分布

(a)上部プレナム底部(炉心上部)にNaの低温域の形成が見られ、(b)下方にある炉心を外周部から冷却する様子が確認できます。

 

図7-7 PLANDTL-2試験を対象とした解析の一例

図7-7 PLANDTL-2試験を対象とした解析の一例

(a)三次元解析モデルを用いた(b)数値解析結果から、上部プレナム底部のNaの低温域の形成、炉心流入挙動などの代表的な現象を把握することができます。

 


ナトリウム冷却高速炉(SFR)の開発では、安全性強化の一環として液体金属ナトリウム(Na)の優れた伝熱特性を活かした崩壊熱除去システムの検討を進めており、図7-5の右上の赤枠で示す原子炉容器の上部プレナム内に浸漬させた冷却器(浸漬型DHX:浸漬型直接炉内冷却器)による崩壊熱除熱システムの採用が有力となっています。このシステムでは、炉心部から流出した高温Naは浸漬型DHXに取り込まれて冷却され、密度が増加した低温Naは自重で流下して炉心部へ供給されることから、外部電源を失った場合でも動作するという優れた特長があります。この浸漬型DHXから流出した低温Naは、燃料集合体出口や燃料集合体間の隙間部に入り込みますが、炉心部から流出する高温Naとの相互作用を把握し、炉心が確実に冷却されることを確認する必要があります。このため、炉心全体に及ぶ熱流動挙動を把握すること、信頼性の高い試験データを取得して数値解析による冷却性能評価手法の構築に役立てることを目的に試験研究を実施しています。

図7-5にNa試験装置(PLANDTL-2)の概略を示します。PLANDTL-2は大型SFRの約1/5縮尺となっており、上部プレナム、炉心部、浸漬型DHX及び炉上部機構などの主要機器を模擬した装置となっています。炉心領域は、実炉同様に多数の六角管流路(ヒータ発熱体3列、非発熱体1列)で模擬しています。試験体内部には、炉心部の約300点を含む約550点の温度センサーを設置しており、同時計測によって炉心が冷却される様子をこれまでにない詳細さと規模で、その時間変化とともに把握できます。図7-6に試験結果の一例を示します。図7-6(a)の温度分布から、浸漬型DHXの冷却により上部プレナム底部にNaの低温域が形成され、図7-6(b)の断面分布に示すように、炉心外周部から低温Naが炉心内部(六角管流路や六角管間ギャップ部)に潜り込んで炉心を冷却することが分かります。この一連の現象は、浸漬型DHXによって炉心が安定的に冷却されることを示すものであり、安全性を強化した高速炉プラントの実現につながるものです。

取得した試験データは、図7-7に一例を示すように原子炉容器内の複雑な熱流動現象を予測可能な多次元熱流動解析手法の構築に向けて、妥当性確認及び高精度化に役立てています。将来的には大型試験による技術実証を数値解析に置き換えることで、試験装置の建設や運転等に関わる開発コストを大幅に低減することも期待できます。

本研究は、経済産業省資源エネルギー庁からの受託事業「高速炉の国際協力等に関する技術開発」の成果を含みます。

(江連 俊樹)