7-1 炉心上部機構の国内製作技術確立に向けて

−炉心上部機構内の計装配管配置検討及びモックアップによる製作性確認−

図7-2 3D-CADによる炉心上部機構(ACS)機器及び計装配管配置図

図7-2 3D-CADによる炉心上部機構(ACS)機器及び計装配管配置図

仏国実証炉ASTRID600のACSを対象に、外胴内における702本の計装配管を含む多数の配管について、寸法や製作上の要求を満たすような配置及び組立手順を検討しました。

 

図7-3 ACSモックアップ

図7-3 ACSモックアップ

1/3炉心を対象としてモックアップにより配管配置及び施工性について確認し、設計製作に係る知見を獲得しました。

 

図7-4 FFDL配管ノズルの周方向溶接に対する溶接機アクセス性概念図

図7-4 FFDL配管ノズルの周方向溶接に対する溶接機アクセス性概念図

溶接機の周回に必要な間隔(50 mm)を確保するよう、FFDL配管ノズルの水平方向取付角度(θ)を適切な範囲に制御することで、制御棒シュラウド管隣接部においても溶接機のアクセス性は確保できる見込みです。

 


ナトリウム冷却型高速炉の炉心上部に位置する炉心上部機構(Above Core Structure:ACS)は、制御棒駆動機構のほか、集合体出口温度計装(Thermocouple:TC)や破損燃料位置検出計装(Failed Fuel Detection and Location:FFDL)といった炉内計装設備を支持するための設備です。ACSの設計においては、各集合体出口からACS内部に引き込まれる多数の計装配管について、寸法や製作上の要求を満たすように配置や組立手順を検討することが必要となります。

本研究では、日仏高速炉協力の一環として、仏国実証炉であるASTRID600(タンク型炉、熱出力1500 MW/電気出力600 MW)のACSを対象に、3D–CADを用いた計装配管の配置及び組立手順の検討、モックアップを用いた取付施工性の確認試験を実施しました。

3D–CADによる検討において、TC配管(図7-2①)やFFDL配管(図7-2②)は軸方向に数分割し下部から上部へ、径方向については中心から外側に向かってそれぞれ取付を進めていくことにより、702本の計装配管やそれらをACS上部で束ねるシュラウド管(図7-2③、④)等について、寸法や配管曲げ加工時の曲率に対する要求の範囲内において、それらが互いに接することなく、かつ作業者による施工空間を確保するような配置及び組立手順を検討しました。次に、検討した配置及び組立手順に基づき、図7-3に示すように1/3炉心を対象としたACSのモックアップを作成し、施工性を確認しました。その結果、配管同士の接触が複数箇所確認されたほか、溶接機のアクセス性が困難となる箇所があることが分かりました。

配管同士の接触については、3D–CAD上の検討において配管同士の最低間隔に制限値を設けておらず、結果として、曲げ加工等に伴う製作上の公差を下回る箇所が生じ、接触に至ったと考えられます。モックアップ試験の結果を踏まえ、全箇所について曲げ加工等に伴う製作上の公差以上の間隔を確保するように配管の配置を再検討することで接触は避けられる見込みです。

溶接機のアクセス性については、ACS下部のバッフル板上の計装案内管(図7-2⑤)にFFDL配管を水平方向に取付け、周方向溶接により固定する際、FFDL配管ノズルと隣接する制御棒シュラウド管との間隔が、溶接機の周回に必要な間隔(50 mm)を下回るために施工不可となる箇所がありました。これについては、図7-4に示すように溶接部位の周囲に必要な間隔を確保するよう、FFDL配管ノズルの水平方向取付角度を適切な範囲に制御することで解決できる見込みです。

本研究を通じ、国内技術によるタンク型炉のACS製作技術成立性に見通しを得るとともに、今後の高速炉実用化に向けたACSの設計製作に係る重要な知見を獲得しました。

本研究は、経済産業省資源エネルギー庁からの受託事業「高速炉の国際協力等に関する技術開発」の一環として実施した成果を含みます。

(高野 和也)