8-2 合理的な処分に向けた放射性廃棄物確認方法の構築

−照射後試験施設の廃棄物に対する評価方法の検討−

図8-4 137Csと241Amの放射能濃度の関係

図8-4 137Csと241Amの放射能濃度の関係

ホットラボの廃棄物試料において、137Csと241Amの間には非常に良い相関関係が確認されました。このため、137Csの放射能濃度の測定値から241Amの放射能濃度を評価する方法(スケーリングファクタ(SF)法)が適用できます。

 

図8-5 60Coと3Hの放射能濃度の関係

図8-5 60Coと3Hの放射能濃度の関係

60Coと3Hの相関関係は非常に小さく、SF法が適用できないため、得られた測定値と検出限界の平均値を利用する平均放射能濃度法を適用しました。

 


原子力機構の研究施設等から発生する放射性廃棄物は、将来的に埋設処分を行う計画です。その際、どのような放射性核種がどれくらいの濃度で存在しているかを調べ、処分場に受け入れ可能な放射能濃度より低いことを確認する必要があります。しかしながら、α線あるいはβ線を放出する、いわゆる難測定核種を廃棄物容器の外側から測定することは、放射線の特性上、非常に困難です。そこで、廃棄物に含まれる放射性核種の生成機構や移行挙動が同じであれば、廃棄物中の放射能濃度に相関があることを利用し、γ線放出核種(基準核種:コバルト60(60Co)、セシウム137(137Cs)等)の測定結果とあらかじめ求めた核種間の比率(スケーリングファクタ:SF)を組み合わせることで、難測定核種の放射能濃度評価を迅速に行うことを目指しています。

これまでに、原子炉施設であるJPDR、JRR-2、JRR-3の金属廃棄物をモデルとした放射能濃度評価法の検討を実施してきました。今回は新たに、照射後試験施設であるホットラボから発生した廃棄物を対象に、埋設処分の被ばく線量評価において重要な25核種に対して放射能濃度評価法の適用性について検討しました。

廃棄物に含まれている放射性核種には、原子炉運転中に発生した中性子によって構造材や構造材の腐食物が放射化して生成するもの(Corrosion Products:CP)と、原子炉の核分裂生成物(Fission Products:FP)及びウランから生じるアクチノイド元素があります。ホットラボは原子炉内で中性子などを照射した試料に対する試験が実施されていたため、ホットラボからの廃棄物にはこれらの放射性核種が含まれています。

検討結果の一例を図8-4に示します。互いに不揮発性、不溶解性の特徴を持つ137Cs(FP)とアメリシウム241(241Am)(アクチノイド元素)を比較すると非常に良い相関関係が得られ、この二つの間にはSFを用いた評価法が適用できる見通しが得られました。

一方、トリチウム(3H:三重水素)、炭素14(14C)など揮発性の核種で廃棄物への移行挙動が60Coとも137Csとも異なる核種は、図8-5に示すとおり基準核種との相関が非常に小さく、放射能濃度が一定の範囲に分布しています。このように基準核種との相関がない場合や元々の生成量が少なく有意な放射能が検出できない場合には、測定値と検出限界の平均値を利用した平均放射能濃度法を適用することとし、廃棄物処分場の基準値に対して1000倍以上の裕度を持っていることを確認しました。

このような検討を様々な放射性核種に対して実施した結果、SF法、平均放射能濃度法を組み合わせることにより、ホットラボ廃棄物中に含まれる25核種に対して迅速に放射能濃度評価が行える見通しを得ることができました。今後も、本検討の考え方を基に、様々な研究施設について、放射能濃度評価法の検討を行っていく予定です。

(水飼 秋菜)