1-12 空間線量率減少の予測精度の向上のために

ー環境要因による経時変化を新たなモデル式で再現ー

図1-28 1Fから80 km圏内の空間線量率の経時変化傾向

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図1-28 1Fから80 km圏内の空間線量率の経時変化傾向

(a)80 km圏内全域及び各土地利用区分、(b)各避難指示区域(土地利用区分は建物用地)について、空間線量率の比率(2011年6月に対する各走行サーベイの比率)を示しています。

 

図1-29 空間線量率の経時変化とモデル式から求めた結果の比較

拡大図 (162kB)

図1-29 空間線量率の経時変化とモデル式から求めた結果の比較

避難指示解除準備区域における森林及び建物用地に分類される測定データについて、Two-groupモデルにより求めた環境半減期を用いることで、空間線量率の経時変化をよく再現することができました。

 


東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故の後、放射線量分布マップを作成するため、また避難指示区域の解除判断等に資する基礎データを取得するため、京都大学原子炉実験所の開発による走行サーベイ装置KURAMAシステム(以下、「KURAMA」)を用いた空間線量率測定を2011年6月以降継続的に実施してきました。KURAMAは一般の乗用車に搭載可能な放射線測定器で、道路上を移動しながら空間線量率を連続測定します。

本研究では、空間線量率の経時変化の傾向を正しく把握するため、これまで蓄積した膨大な測定データを分析しました。空間線量率は、放射性セシウムの放射性崩壊による減衰のほかに降雨や除染等の環境影響によっても減少していきます。環境影響による減少速度を定量的に評価する指標として環境半減期があり、現在広く用いられている2成分環境半減期モデルでは、減少が速い(環境半減期が短い)成分と減少が遅い(環境半減期が長い)成分の組合せで表されます。

事故の影響を大きく受けた1Fから80 km圏内全域において、2011年6月から2018年11月までの走行サーベイ測定により得られた空間線量率は、放射性セシウムの放射性崩壊によれば、2011年6月を1とすると2018年11月には0.29まで減少すると予測された(図1-28(a)実線)のに対し、実際には0.08程度まで減少していました(図1-28(a)データ点〇)。この違いが環境半減期による減少で、2成分環境半減期モデルによれば、80 km圏内全域での減少傾向は同図破線で表されます。また、土地利用区分の影響を調べた結果、建物用地で減少が最も速く、森林では最も遅い結果となり、人間活動が活発な場所では空間線量率の減少が速いことが分かりました。

空間線量率の変化の傾向は、避難指示区域の種別によっても異なり(図1-28(b))、避難指示解除準備区域や居住制限区域では除染作業が積極的に進められた結果、2013年から空間線量率の減少が加速し(同図矢印)、帰還困難区域と差が生じてきていることが分かりました。この空間線量率の変化は、従来の単純な2成分環境半減期モデルではうまく表現できません。そこで、除染の効果を考慮し、速い成分の環境半減期が変化するTwo-groupモデルを導入しました。本モデルを用いて、避難指示解除準備区域での速い成分の環境半減期を評価した結果、2013年以降では0.5〜1年と評価され、それ以前の2〜3年に比べて非常に短くなっていることが明らかになりました。図1-29に示すように、本モデルにより評価した環境半減期を用いることで、空間線量率の経時変化を良好に再現できるようになりました。これらの成果は除染の効果を可視化するもので、今後の除染や避難指示解除に係る検討において活用が期待されます。

本成果は、原子力規制委員会原子力規制庁からの受託研究「平成30年度放射性物質測定調査委託費(東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の分布データの集約)事業」の成果の一部を含みます。

(安藤 真樹)




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