1-2 燃料デブリの非破壊測定に向けた検出器開発

ーCeBr3を用いた高線量率測定用ガンマ線スペクトロメトリシステムー

図1-4 開発した高線量率測定用ガンマ線スペクトロメトリシステム

図1-4 開発した高線量率測定用ガンマ線スペクトロメトリシステム

(a)小型軽量な測定システムを開発しました。(b)高線量率測定に向け開発した光電子増倍管へ、シンチレーターが組み込める構造になっています。(c)微小な立方体(5 mm × 5 mm × 5 mm)のCeBr3を密封したパッケージを構築しました。

 

図1-5 ガンマ線スペクトル分布

拡大図 (267kB)

図1-5 ガンマ線スペクトル分布

(a)137Cs照射場と(b)60Co照射場で、それぞれ1407 mSv/h並びに2221 mSv/hまでの線量率までのガンマ線スペクトル測定をして、エネルギー分解能を評価しました。

 


東京電力福島第一原子力発電所(1F)では、廃炉工程の最難関に位置づけられている原子炉格納容器内からの燃料デブリの取出しに向けた準備が進められています。燃料デブリは、核燃料と構造材等が高温で溶けて混ざり冷えて固まったもので、組成が不均一なため、保管や処理処分の方法を決めるためには非破壊測定等を用いて燃料デブリの特性を把握する必要があります。通常の原子力施設では、燃料デブリのような高放射線を有する核燃料物質を測定する場合、半導体検出器に遮蔽を施した大型な測定装置が利用されます。しかし、1Fは、事故による損傷や瓦礫により狭窄部が多く、さらに、高線量率下での作業では遠隔機器を利用する必要があります。そのため、測定装置の小型軽量化が求められています。そこで、私たちは、高線量率下でガンマ線スペクトルを取得できる小型軽量な測定システムを開発しました(図1-4(a))。

当該システムでは、半導体検出器よりも高線量率測定に有利なシンチレーター方式を採用しました。CeBr3は、発光時間が短く(20 ns以下)、エネルギー分解能が良く(4%程度)、高線量率下でのガンマ線スペクトル測定に適したシンチレーターです。私たちは、CeBr3を微小な立方体(5 mm × 5 mm × 5 mm)に加工し、潮解を防ぐために密封しました(図1-4(c))。これを、高線量率測定のために開発した光電子増倍管と組み合わせて、センサーユニットを製作しました(図1-4(b))。さらに、当該システムの信号処理では、1Fの高線量率かつ多様な測定環境を考慮し、デジタル信号処理を採用することで高速かつ柔軟な信号処理を可能としています。

当該システムの高線量率下での性能を調べるため、137Cs並びに60Coの放射線照射場において、線量率ごとのガンマ線スペクトルを取得しました(図1-5)。(a)137Cs照射場では、線量率が26 mSv/hから1407 mSv/hで照射したところ、エネルギー分解能(662 keV)は26 mSv/hで4.2%、高線量率の1407 mSv/hでは5.5%でした。同様に、(b)60Co照射場では、22 mSv/hから2221 mSv/hまで照射して、エネルギー分解能(1333 keV)は、22 mSv/hで3.1%、高線量率の2221 mSv/hで4.2%になりました。上記のエネルギー分解能は、使用済核燃料や放射性廃棄物の非破壊測定において測定対象核種となる134Cs、137Cs、60Co、154Euを識別するために必要なエネルギー分解能を満たしています。

本成果は、東京大学並びに産業技術総合研究所との共同研究で実施し、今後、燃料デブリの迅速な非破壊測定の実現に向けて研究開発を継続し、1Fの安全かつ円滑な廃止措置の実現に向けて貢献していきたいと考えています。

(冠城 雅晃)




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