1-7 超音波で鉄筋コンクリートの腐食劣化を探る

ー廃止措置のための非破壊検査技術の開発に向けてー

図1-16 鉄筋コンクリートの腐食劣化過程

図1-16 鉄筋コンクリートの腐食劣化過程

 

図1-17 鉄筋とコンクリート間の密着の程度による鉄筋を伝播する超音波の伝播形態の違い

図1-17 鉄筋とコンクリート間の密着の程度による鉄筋を伝播する超音波の伝播形態の違い

 

図1-18 鉄筋コンクリートの鉄筋を伝播する超音波を測定する実験装置と使用した試験体

拡大図 (462kB)

図1-18 鉄筋コンクリートの鉄筋を伝播する超音波を測定する実験装置と使用した試験体

 

図1-19 電解腐食時間ごとの超音波信号

図1-19 電解腐食時間ごとの超音波信号

(a)時間領域、(b)周波数領域です。(a)の点線囲いの信号は、(b)の点線囲いのピークに対応します。(b)中の白矢印は、(a)の信号における低周波数成分が腐食の進展によって減少していることを示し、黒矢印は鉄筋径に依存するピークが白矢印で示した低周波成分の減少により顕在化していくことを示します。(b)のΔfは、腐食の進展によってピークの位置が高周波側に遷移したことを示します。

 


東京電力福島第一原子力発電所の廃止措置は、長期のプロジェクトです。安全で円滑な廃止措置を完遂するためには、地震や水素爆発で損傷した建屋構造物等の健全性を維持することが不可欠です。また、今後の地震等によるさらなる損傷を防ぐためにも建屋構造物等の劣化状況を簡便に測定・評価できる技術を確立することが重要です。炉内への海水注入が実施されたことや建屋が雨ざらしであることから、私たちは特に鉄筋コンクリート構造物の腐食劣化に焦点をあて、非破壊的に評価可能かを調査しました。

鉄筋コンクリートの腐食劣化の過程は図1-16のように進展します。健全な鉄筋コンクリートは、鉄筋と周囲のコンクリートが強固に密着しており、腐食劣化が進展すると密着の程度が低下します。鉄筋を伝播する超音波は、鉄筋とコンクリートとの密着の程度によりその波形が異なります。したがって、その波形の変化を捉えることで鉄筋コンクリートの腐食劣化を検出可能であると考え(図1-17)、私たちは図1-18に示す実験装置を用いて、鉄筋コンクリート試験体の劣化の程度と超音波の波形の変化の相関を調べる試験を行いました。また、鉄筋コンクリートの劣化は、試験体を電解腐食(通電することで腐食を生じさせる)することで模擬しました。

実験では、遠方に非接触で超音波を励起可能なナノ秒パルスレーザー源を用い、鉄筋コンクリート試験体の鉄筋の片方の端面に対してレーザーを照射することで超音波を発生させ、その鉄筋の反対側の端面に超音波探触子を設置して波形を測定しました。超音波波形の取得後に試験体を電解腐食させ、一定時間ごとに同様の実験で得られた超音波の波形が図1-19(a)であり、その周波数スペクトルが図1-19(b)です。図1-19(a)、(b)の超音波信号から、電解腐食時間が一定時間(本実験では48時間)以降に測定した超音波信号には、特徴的な共振信号が現れることが分かります(図中の点線囲い)。これは鉄筋ーコンクリート間の密着の程度が低下することで波の伝播形態が変化したことに起因するもので、図1-19(b)では低周波成分の減少として表れます。この共振信号は鉄筋端面における超音波の共振によって発生しており、図1-19(b)中のΔfは、電解腐食によって鉄筋の径が減少することによって、このピークが高周波側へ遷移したことを示したものです。 

鉄筋コンクリートの腐食が進展し、鉄筋ーコンクリート間の密着の程度が低下すると、低周波領域の信号強度が低下し相対的に鉄筋径に相関する信号が顕在化すること、径の減少によってこの周波数が高周波側へ遷移することは、鉄筋を伝播する超音波が、鉄筋コンクリートの腐食劣化の検出及び腐食の程度の評価に応用できる可能性があることを示しています。

(古澤 彰憲)




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