8-9 地形や処分場深度の変化を考慮した安全性の評価

ー地層処分の安全評価のための地形・処分場深度変遷解析ツールの開発ー

図8-26 地形・処分場深度変遷解析ツールを用いた処分場深度と地形変化の計算例

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図8-26 地形・処分場深度変遷解析ツールを用いた処分場深度と地形変化の計算例

複数の隆起速度の設定(ケース1〜4)に対して、処分場深度と地形変化を計算しました。図のように地形と処分場深度変化にはいくつかのパターンがあり、計算結果がどのパターンに近いかを推定することで、安全評価で着目する影響の判断に活用できます。また、出力される地形や深度変化の定量的な情報を、地下水流動や地表への核種移行経路の評価の前提条件として活用することも可能となります。

 


高レベル放射性廃棄物の地層処分では、火山・火成活動、地震・断層活動、隆起・侵食等の自然現象による著しい影響が回避されるように除外要件などに照らしてサイトが選定されます。一方、幅広い地域で確認されている気候変動や緩慢な隆起・侵食の影響については、その影響をあらかじめ評価しておくことが重要です。

本研究では、隆起・侵食が地層処分システムの性能に及ぼす影響を、場所に依存する影響も含めて広く評価できるようにするために、隆起・侵食による地形及び処分場深度の時間変化を、初期の地形、隆起速度やその分布、処分場の位置等の条件を変えて迅速に計算できるツールを構築しました。隆起・侵食によって地形や処分場深度が変化すると、それらは地下水流動場の変化を介して処分場から地表への核種の移行挙動や移行経路、地表への流出場所等に影響を及ぼすことが想定されます。一方、地形や処分場深度の変化は、評価の対象となる場所の条件、例えば初期条件としての地形や処分場位置、隆起速度等に依存するため、それらの組合せによってどのような変化が顕在化するのかが異なることになります。具体的には、場所の条件の違いによって、A〜Cの三つのパターンが想定されます。

A) 地形と処分場深度ともに変化が小さい

B) 処分場深度変化のみが大きい

C) 地形と処分場深度ともに変化が大きい

図8-26は今回構築したツールを活用して複数の隆起速度の設定(ケース1〜4)に対して、処分場深度と地形変化を計算したものです。このように本ツールを様々な場所の条件に適用して地形と処分場深度の時間変化を計算し、それらが上記のどのパターンに近いかを推定することで、安全評価における隆起・侵食の影響を考慮する際に着目すべき場所の条件やそれによる影響(例えば移行経路の変化や地表への流出場所の変化等)の判断にもつながると考えられます。また、本ツールにより出力される地形や深度変化の定量的な情報を、地下水流動や地表への核種移行経路の評価の前提条件として活用することも可能となります。

今後は本ツールを活用し、地下水流動や地表への核種移行経路の評価、さらにはそれらを用いた核種移行評価や生活圏評価につなげていくことが重要です。

(山口 正秋)