3-6 核融合炉の建設コスト低減を目指して

−早期実用化につながるコンパクトな核融合炉の構想−

図3-12 核融合原型炉の概念図

図3-12 核融合原型炉の概念図

ITER程度のコンパクトな炉心寸法でありながら、3百万kWの核融合出力(ITERの6倍)、約百万kWの電気出力を発生する設計です。

図3-13 (a)核融合原型炉の超伝導コイル系と(b)従来のトカマク炉の超伝導コイル系

図3-13 (a)核融合原型炉の超伝導コイル系と
(b)従来のトカマク炉の超伝導コイル系

構想中の低アスペクト比原型炉ではコイル系の磁気エネルギーを大幅に低減可能であり、この結果、強度部材の少ない細いコイル系が成立します。

核融合は、安全性や環境影響の側面での優位性を考慮すると将来のエネルギー技術として有望な選択肢といえますが、発電コストに課題があります。核融合が実用化されるためには、市場に受け入れられるための経済性の向上が不可欠です。私たちはこのような課題を直視しながら、21世紀中葉の実用化にスムーズにつながる核融合原型炉の設計研究を進めています。

ITERの次段階となる核融合原型炉では、百万kW級の実用規模での発電実証が必要とされます。他方、核融合原型炉の使命は発電の実証だけにとどまらず、その次の実用炉に結びつく技術的信頼性と経済性を示すことにもあります。そこで、ITER規模の炉心寸法を持つ、従来の核融合発電炉概念より大幅なコンパクト化を図った核融合原型炉の概念を構想しています(図3-12)。この原型炉概念は、コンパクトでありながら、2020年頃に想定される比較的保守的な技術で成立する点に特長があります。このような原型炉が構想可能になった理由は、1)軽量な超伝導コイルで高磁場を発生するという相反する要求を両立させるコイル概念を着想したこと、及び、2)これまで核融合研究ではあまり注目されなかった低アスペクト比領域(縦長断面のズングリ型)に着目したことによります。原型炉と従来の核融合炉の超伝導コイルの外観を図3-13に示します。低アスペクト比を持つ原型炉ではコイルの磁気エネルギーが大幅に低減されるので細いコイル系で応力を支持可能になり、これは炉本体の中では高価な機器であるコイルの製作コスト削減に効果があります。また、炉心プラズマに対する要件の緩和、電磁力に対する炉内機器の設計条件の緩和など、低アスペクト比には炉工学的なメリットもあります。

これまでの研究から、上述のような炉概念が基本的に成立し、コスト低減の観点で大きな意義があることがわかってきました。今後は、既存の炉工学技術又はその延長技術を組み合わせて原型炉の構造を具体化する計画です。