図4-17 JT-60SA超伝導コイルシステム
図4-18 EF4用パンケーキコイル
図4-19 EF4コイル巻線
トカマク型核融合炉の成立条件のひとつとして、高温高密度のプラズマを長い間閉じ込めておく必要のあることが挙げられます。そこで、プラズマを制御するために使用するコイルを超伝導化することが必須となります。将来の核融合炉を目指した実験を行う装置JT-60SAでは、超伝導コイルを日欧で協力して設計・製作しており、中心ソレノイド(CS)と平衡磁場(EF)コイルからなるポロイダル磁場(PF)コイルシステムについて、日本が設計・製造を担当しています(図4-17)。これらのコイルは、超伝導導体を平板状に巻いたパンケーキコイル(図4-18)を複数層重ね、パンケーキコイル同士を電気的に接続することで一体のコイルに仕上げます。最初に製作しているEF4コイルは、二層パンケーキ(ダブルパンケーキ:DP)コイルを一単位として製作し、このDPコイルを10枚重ねて完成させます。
高性能プラズマを維持するためには、プラズマの加熱位置や形状などの制御が必要です。PFコイルシステムは、これらの制御に用いられるため、精度を高く製作することが求められます。特にEF4コイルは、ダイバータを形成するコイルであり、厳密な制御が必要となるため、より高い製作精度が求められます。
プラズマ制御のシミュレーション結果より、本コイルにおいて求められている製作精度は、電流中心半径位置で6 mm以内とされています。EF4コイルを構成する10個のDPコイルについて、円形度の誤差(非円形度)をそれぞれ計測したところ、最大で3.8 mmあることが分かりました。これらの非円形度は、主にジョイントと呼ばれる電気接合部の近傍で大きくなります。そこで、このジョイント部をあるセクションに集中させることなく、DPコイルごとにその位置をトロイダル方向(円周方向)に散らす構造としました。
こうして、DPコイルを重ね合わせることで誤差が平均化され、結果としてEF4巻線全体の非円形度を0.6 mm(−0.4 mm〜+0.2 mm)まで減らすことができました(図4-19)。これは、要求値の1/10で製作できたことを意味し、非常に高い精度でのプラズマ制御が可能であることが期待されます。