図8-13 N,N -ジ(2-エチルヘキシル)ブタンアミド(DEHBA)の構造式
図8-14 DEHBAのUに対する分配比(DU)及びPuに対する分配比(DPu)の硝酸濃度依存性
図8-15 ミキサーセトラー型抽出器を用いたU及びPuの連続抽出試験の様子
使用済核燃料の再処理方法として、モノアミド抽出剤を用いた溶媒抽出法の研究を進めています。モノアミド抽出剤はリン原子を含まないため、焼却等による完全ガス化分解が可能であり、二次廃棄物の発生量抑制につながります。また、現行の商用再処理プロセス(PUREXプロセス)において希釈剤として使用されているドデカンに溶けるため、装置開発に関する既存技術が活用可能です。さらに、PUREXプロセスで抽出剤として使用されているリン酸トリブチル(TBP)と同程度の耐放射線性を持つとともに、放射線劣化物が溶媒抽出に対して大きな悪影響を及ぼさないという特長があります。
モノアミド抽出剤は分子の構造によってU及びPuに対して異なる抽出特性を示します。例として、モノアミド抽出剤のひとつであるN,N -ジ(2-エチルヘキシル)ブタンアミド(DEHBA)(図8-13)のUに対する分配比(DU)と、Puに対する分配比(DPu)を図8-14に示します。ここで、DU及びDPuはU及びPuの抽出能力を示す指標であり、この値が大きいほどU及びPuに対する抽出能力が高いことを意味します。
図8-14に示すようにDEHBAは硝酸濃度が約3 mol/Lの条件ではUとPuの両方を抽出します。一方、硝酸濃度が0.7〜1 mol/Lの条件ではUは抽出しますが、Puはほとんど抽出しません。この性質を活用することにより、硝酸濃度の調節でUとPuを分離する再処理プロセスを考えました。PUREXプロセスではPuの還元剤を添加することによってUとPuの分離を行っていますが、DEHBAを抽出剤に用いるプロセスではPuの還元剤が不要になるため、プロセスの簡素化につながります。
DEHBAを抽出剤に用いた再処理プロセスの構築に向けた基礎試験として、ミキサーセトラー型抽出器を用いたU及びPuの連続抽出試験を行いました(図8-15)。99.9%以上のU及びPuを使用済核燃料の模擬溶解液から抽出するとともに、97%以上のPuをU+Pu混合液に回収し、DEHBAを用いた再処理プロセスの成立性を支持する結果を得ました。
本研究は、経済産業省からの受託事業「平成20年度高速炉再処理回収ウラン等除染技術開発」の成果の一部です。