9-6 高精度なNb3Sn超伝導コイルの製作方法を確立

−プラズマの精密制御に向けたJT-60SA用中心ソレノイドの開発−

図9-16 JT-60SA用中心ソレノイド

図9-16 JT-60SA用中心ソレノイド

JT-60SAの中心ソレノイド(CS)は、四つのモジュール(CS1〜4)から成り、各モジュールは六つの8層コイル(OP1〜6)と一つの4層コイル(QP)で構成されます。

 

図9-17 CSモデルコイル

図9-17 CSモデルコイル

CSモデルコイルは、実機QPと同じ形状の試作コイルです。直径2 m,4層40ターンのコイルで性能確認試験に使用しました。

 

図9-18 CSモデルコイル発生電圧測定

図9-18 CSモデルコイル発生電圧測定

電流変化に伴う誘導電圧のみ観測され、超伝導状態(発生電圧なし)を維持したまま、最大30 kAまでの通電に成功しました。

JT-60SA装置の開発の一環として、超伝導コイルの製作を進めています。JT-60SAはD型のトロイダル磁場(TF)コイル,同心円状の中心ソレノイド(CS)及び平衡磁場(EF)コイルから構成され(図9-16)、TFコイルは欧州,CSとEFコイルは日本でそれぞれ製作が進められています。

TFコイルとEFコイルは、発生磁場が約6 Tと低いためニオブチタン(NbTi)導体が使用されています。NbTiは変形に強く加工性が高いという長所を持つ一方、高磁場の環境では使用できません。そのため、約9 Tと高磁場で運転されるCSはニオブスズ(Nb3Sn)導体を用いて製作されます。

Nb3Snは非常に脆く変形により超伝導特性を失うため、超伝導体となったNb3Sn導体を曲げてコイルに成形することはできません。そこで、ニオブ(Nb)とスズ(Sn)の化合前に所定の形状に成形し、その後熱処理を実施し超伝導体であるNb3Snを生成します。加えて熱処理後に行う電気絶縁処理は導体に過度な変形を加えずに実施しなければなりません。また、プラズマを精密に制御するためには、CSは直径2 mに対し半径の誤差が4 mm以内の真円度で製作する必要があります。このように、CS製作にはNb3Sn導体を扱う特有の高い技術力に加えて、高精度でコイルを製作する方法の開発が要求されました。

そこで、導体剛性と曲率から必要な加工量を決定し曲げ加工を行う巻線装置,導体剛性のばらつきに起因する曲率のずれを逐次補正する巻線手順により精度良く導体成形する方法を開発しました。また、熱処理したコイルを上下方向に広げることで、導体に過度な変形を加えずに絶縁処理のスペースを確保する装置を開発し、加えて絶縁厚さを適正に管理することにより、巻線精度を保ったまま絶縁処理を行うことを可能にし、許容誤差(4 mm)を満たす1.6 mmの巻線精度でコイルを製作する方法を確立しました。これらの装置・手順を用いて、CSモデルコイル(図9-17)を製作し、その性能確認試験を実施しました。

この結果、JT-60SAで要求される定格20 kAの1.5倍である30 kAまでの電流を超伝導状態を維持したまま通電することに成功しました(図9-18)。すなわち、開発した製作装置・製作手順によりJT-60SAのCSが製作できることを確認しました。今回の成果を受けて、JT-60SAのCS実機製作を開始しました。