4-5 マイナーアクチノイド核変換用燃料の挙動評価に向けて

−ミリグラム規模の高純度キュリウム試料の分離精製回収に成功−

図4-12 調製後約40年経過した<sup>244</supCm酸化物試料を原料とした高純度Cm試料の調製方法の概略

図4-12 調製後約40年経過した244Cm酸化物試料を原料とした高純度Cm試料の調製方法の概略

243Am不純物を約1%含む20%244Cm-80%240Pu混合酸化物を硝酸+過酸化水素水中で加熱溶解し、陰イオン交換法によるPu除去、3級ピリジン樹脂を用いたクロマトグラム法によるAm除去によって得られたCm溶液を用いて、高純度Cmシュウ酸塩試料を調製しました。

 

図4-13 3級ピリジン樹脂を用いたクロマトグラム法によるAm/Cm分離

図4-13 3級ピリジン樹脂を用いたクロマトグラム法によるAm/Cm分離

東京工業大学が開発・製造した3級ピリジン樹脂を充てんしたクロマトグラム用カラムに、Cm-Am溶液を注入してから、8M硝酸-メタノールを連続的に通液し、流出液を分画回収しました。3級ピリジン樹脂への吸着性がわずかに異なることを利用して、CmとAmを分離することができました。

 

図4-14 調製したCmシュウ酸塩

図4-14 調製したCmシュウ酸塩

分離精製したCm溶液にシュウ酸を添加し、約10 mgのCmシュウ酸塩を調製しました。

 


現在の核燃料サイクルにおいて高レベル放射性廃棄物に分類されている核分裂生成物やマイナーアクチノイド(MA:ネプツニウム(Np),アメリシウム(Am),キュリウム(Cm))などの元素を化学的性質及び利用目的に応じて分離し、長半減期核種を短寿命核種あるいは安定核種に核変換することによって地層処分の負担を軽減するための研究開発が国内外で実施されています。長寿命核種の核変換は、発電用高速炉若しくは核変換専用のシステム(加速器駆動システム(ADS)など)において、対象元素を含む燃料を燃焼させることによって行うことが提案されています。

核変換用MA含有燃料の開発においては、燃料として使用するMA含有化合物の熱物性・機械物性・化学反応などの挙動を理解し制御する必要があります。これまでに、私たちはNp及びAm化合物の挙動に関する研究を進めてきました。しかし、Cm化合物については、研究に必要なミリグラム規模以上の高純度試料の調製が困難という課題がありました。その原因は、最も入手しやすい同位体244Cmは半減期が比較的短く(18.1年)、取扱いが難しい上に、精製後短期間で娘核種240Puが生成するためです。

私たちは、調製後長時間経過した244Cm酸化物を原料として高純度Cm試料を調製することにしました。この原料は243Am不純物を約1%含む20%244Cm-80%240Pu混合酸化物であり、高純度Cm試料を得るためには、Pu及びAmを除去することが必要でした(図4-12)。このため、最初に原料を酸化剤である過酸化水素水を少量加えた硝酸中で加熱溶解して溶液にし、陰イオン交換法によりPuを除去しました。次に、Pu除去後の試料を硝酸-メタノール溶液にして、3級ピリジン樹脂を用いたクロマトグラム法によって、AmとCmを分離しました(図4-13)。そして、分離精製したCm溶液にシュウ酸を添加することによって、Cmシュウ酸塩沈殿生成物を得ることに成功しました(図4-14)。

これまでに、本法で得られた高純度Cm試料を用いてCm酸化物及びCm窒化物を調製し、その熱物性データを取得しました。また、核変換用MA高含有燃料として使用する化合物の挙動評価用のCm原料を調製するための技術が確立されました。

本研究は、文部科学省からの受託研究「広域連携ホットラボ利用によるアクチノイド研究」の成果を含みます。