9-5 超伝導マグネット用サーマルシールドの製作

−現地組立てに対応したサーマルシールドの製作法を確立−

図9-13 JT-60SA用サーマルシールド(TS)

図9-13 JT-60SA用サーマルシールド(TS)

TSは真空容器の周りを覆うVVTS,ポートの周りを覆うPTS,クライオスタット側のCTSから構成されます。

 

図9-14 TSの詳細

図9-14 TSの詳細

TSは2枚の3 mm厚みのステンレス鋼板とその間の冷却配管から構成されます。

 

図9-15 VVTSの仮組み

図9-15 VVTSの仮組み

実機製作した10度のVVTSを40度まで仮組みをして、製作寸法が寸法公差以内であることを確認しました。

 

図9-16 真空容器TS配管の可とう性

図9-16 真空容器TS配管の可とう性

冷却配管を溶接で接続するために、配管に可とう性を持たせて、位置合わせを可能にしました。

 


JT-60SAプラズマ実験装置の開発のために、超伝導マグネットの製作を進めています。マグネットはD型のトロイダル磁場(TF)コイル,円形な中心ソレノイド(CS)及び平衡磁場(EF)コイルから構成されます。それら超伝導マグネットを極低温(4 K)に維持するには、クライオスタットで真空断熱して熱伝導を低減し、かつ80 Kのヘリウムで冷却したサーマルシールド(TS)で放射熱を低減する必要があります。

TSは、図9-13に示すように真空容器の周りを覆うVVTS,ポートの周りを覆うPTS,クライオスタット側のCTSから構成されます。TSパネルの構造は、図9-14に示すようなステンレス板を2枚重ねた間に冷却配管を配置した単純真空断熱構造です。配管とステンレス板は、室温側は3 mm程度の隅肉溶接をして熱を伝達しています。ステンレス板は放射率0.15になるように鏡面研磨しています。VVTSは渦電流を抑制するために周方向に18分割されています。そのため、配管はCTSの下部から入り、CTSの上からVVTSに入る経路で、各TSパネルを通る経路になっており、TSパネル間の配管を溶接で接続する必要があります。

VVTSは複雑形状でありながら狭隘な空間に設置することが求められるという課題がありました。試作を何度も行いながら、高さ6.8 mに対して寸法精度±5 mmの精度で製作するにはTSパネルを溶接で組み立てた後に、機械的に形状を修正する方法を確立しました。さらに、パネル間を機械的に連結するカプラーの形状を調整して、TSパネルの相対位置を調整して寸法精度を満足しました(図9-15)。

TSを現地で組立てを行うには、TSパネルを設置して、カプラーで位置調整を行います。CTS間の配管の接続は空間的に余裕があるため容易に接続が可能です。しかし、VVTSはトカマク装置上の狭隘な場所で、TSパネル間の配管を溶接で接続しなければなりません。しかも、カプラーでTSパネル間の位置を調整してしまうと、冷却配管の位置が合わなくなります。そのため、配管の位置を合わせるためには、配管が指定位置に対して±2 mmの範囲内で動く必要があり、図9-16に示すような配管に可とう性を持たせる設計を採用して解決しました。

本研究では、TSパネルの形状を修正する方法,カプラーで位置を調整する方法,可とう性を加えた配管の位置合わせを可能にする工夫を行い、TSの製作方法と組立て方法を確立できました。