8-4 遠方で発生した地震が地下水の動きに与える影響

−東濃地域での地下水圧の観測事例−

図8-10 研究対象領域と地下水圧の観測孔

図8-10 研究対象領域と地下水圧の観測孔

私たちは、研究対象領域内に掘削された深度数百mから約1000 mのボーリグ孔で地下水圧の観測を実施しています。ここではDH-9号孔, MIU-3号孔,AN-1号孔を対象に検討を進めています。

 

図8-11 地震に伴う地下水圧の変化の例 (MIU-3号孔)

図8-11 地震に伴う地下水圧の変化の例 (MIU-3号孔)

MIU-3号孔での地下水圧の変化を示します。MIU-3号孔は深度約700 mで月吉断層を貫通しており、No.1,No.4は月吉断層南側、No.6,No.8は月吉断層北側の水圧を観測しています。地震後の地下水圧は、No.1,No.4で低下、No.6,No.8で上昇していることが確認できます。

 

図8-12 地震に伴う動水勾配の変化の例 (DH-9号孔−MIU-3号孔間の動水勾配)
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図8-12 地震に伴う動水勾配の変化の例 (DH-9号孔−MIU-3号孔間の動水勾配)

地震直後に動水勾配の低下が確認されます。M7〜M8の地震(図中(1)〜(3))では、時間経過に伴い地震前の動水勾配の変化傾向(赤色の点線)へ収束するのに対し、M9を越える巨大地震(図中(4))や研究対象領域の近傍で発生した地震(図中(5))以降については、地震により動水勾配が低下した後、地震前より大きな動水勾配へと変化している傾向にあります。

 


高レベル放射性廃棄物の地層処分では、地下水の動きの評価が重要となります。そのため、地下水の動きを支配する地下水圧の変化を評価することが必要となります。

私たちは、岐阜県東濃地域の研究対象領域(図8-10)において地下水圧の長期観測を実施しています。この観測では、(1)2003年十勝沖地震(2003年),(2)紀伊半島沖の地震 (2004年),(3)駿河湾の地震(2009年),(4)2011年東北地方太平洋沖地震(2011年),(5)岐阜県美濃東部の地震(2011年),(6)スマトラ北部西方沖の地震(2012年),(7)三陸沖の地震(2012年)の後、地下水圧の変化が確認されました。確認された地下水圧の変化は観測区間ごとに異なり、また、同じ観測区間では上昇または下降のいずれか一方の変化を示します(図8-11)。

この観測結果を、地下水の動く速さを支配する要因の一つである動水勾配の変化として整理すると、M7〜M8の地震で生じた動水勾配の変化は、時間経過に伴い地震前の変化の傾向へと戻ることが確認され、これら地震による変化は一時的なものと推測されました(図8-12)。一方で、M9を越える巨大地震や研究対象領域の近傍で発生した地震以降については、地震から2年以上を経過しても、地震前とは異なる変化の傾向を示しているため(図8-12)、動水勾配の変化を確認するための観測を継続する予定です。

これらの結果から、地震に伴う地下水の動きの変化を評価するためには、地下水圧の変化だけでなく動水勾配の変化にも着目して、長期的な変化を確認することが重要になると考えられます。