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8 バックエンド対策及び再処理技術に係る研究開発

図8-1 低レベル放射性廃棄物対策の概要

図8-1 低レベル放射性廃棄物対策の概要

低レベル放射性廃棄物対策として、原子力施設の廃止措置や放射性廃棄物の処理,放射能確認等の放射性廃棄物の発生から処分に至るプロセスに関連する技術開発を進めています。

 

図8-2 地層処分システムの基本

図8-2 地層処分システムの基本

 

図8-3 地層処分技術に関する研究開発の実施体制と成果の反映
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図8-3 地層処分技術に関する研究開発の実施体制と成果の反映

 


原子力施設の廃止措置及び廃棄物の処理処分に向けて

原子力機構における研究開発を円滑に進めるためには、使命を終えた原子力施設の安全かつ経済的な廃止措置及び放射性廃棄物の放射能確認を含めた安全かつ効率的な処理処分が重要になります。原子力機構では、放射性廃棄物の発生から処分に至るプロセスに関連する技術開発を総合的に行っています(図8-1)。また、自らが発生させる放射性廃棄物のほか、大学,民間等の研究施設等から発生する低レベル放射性廃棄物の埋設処分事業に取り組んでいるところです。

なお、バックエンド研究開発部門が取り組んできた、東京電力福島第一原子力発電所事故対応にかかわる「環境試料中ストロンチウム-90分析用自動化システムの開発」について、第1章トピックス1-17で成果を紹介しています。

 

放射性廃棄物の処理処分に関する技術開発

放射性廃棄物は発生由来(ここでは、「天然ウラン系」と「回収ウラン系」に分類)を記録してドラム缶内に保管しています。ドラム缶内容物を適切に処理処分するためには、当該記録が正しいことを確認する必要があります。これに対して、人形峠環境技術センターでは、ドラム缶の外側から計測したγ線スペクトルの特徴を識別して、短時間にドラム缶を分類する方法を開発しています(トピックス8-1)。

アスファルト固化体(以下、固化体)からどのように硝酸イオンが浸出するのか予測し、さらに処分環境に影響を与えないよう処理技術を準備しておくことが重要です。そのため、固化体中の硝酸イオン等の浸出挙動を調べるとともに、固化体中の硝酸塩を取り除く技術を開発しました(トピックス8-2)。

 

放射性廃棄物の埋設処分に関する取組み

放射性廃棄物を埋設処分するためには、埋設処分が可能となるよう、技術基準に適合した廃棄体とする必要があります。技術基準では、放射性廃棄物の飛散防止、モルタル等の固型化材料と放射性廃棄物がドラム缶等の容器と一体となるように充てんすること、容器内に有害な空隙がないことなどが求められています。そこで、モルタルの流動性に着目して、充てん性試験を行いました(トピックス8-3)。

 

地層処分の技術と信頼を支える研究開発

地層処分は、原子力発電に伴って発生する高レベル放射性廃棄物などを、何万年にもわたって人間の生活環境から隔離するための対策として、国際的にも共通した最も実現性の高いオプションです。今後の原子力政策の動向にかかわらず高レベル放射性廃棄物などは既に発生しており、その対策への負担は将来世代に先送りするわけにはいきません。現在の我が国の方針では、使用済燃料の再処理により発生する高レベル放射性廃液を、ガラス原料と混ぜ、高温で溶かし合わせてガラス固化体にします。これを、30年から50年程度冷却のために貯蔵した後、金属製のオーバーパックに封入した上で、地下300 m以深の安定な岩盤の中に、粘土を主成分とする緩衝材で包み込んで埋設します(図8-2)。地層処分の事業は、候補地の選定から処分場の閉鎖まで100年以上を要するため、国が責任をもって継続的に地層処分の技術基盤を強化し、社会の信頼を得ながら段階的に進めていくことが重要です。そのため、私たちは様々な観点から地層処分の技術と信頼性を支える研究開発に取り組んでいます。

 

深地層の科学的研究

まず、地層処分が行われる地下深部の環境を総合的に研究するため、花崗岩と堆積岩を対象に二つの深地層の研究施設計画を進めています(図8-3)。東濃地科学センター及び幌延深地層研究センターでは、それぞれの深地層の研究施設を活用して、地下深部の岩盤や地下水の性質を調べる技術や手法を整備するための研究を進めています(トピックス8-48-58-68-7)。

また、地質環境の長期安定性に関する研究として、火山や活断層などの自然現象の活動履歴を調べ、将来の変化を予測するための技術の開発を進めています。活動履歴を調べるために不可欠な年代測定技術(トピックス8-8)については、2014年11月に開設した土岐地球年代学研究所における研究開発が本格化しています。

 

地層処分システムの研究開発

東海村の核燃料サイクル工学研究所の研究施設では、人工バリアのシステム挙動や放射性物質の移動特性に関する実験データなどをもとに、深地層の研究施設計画で得られる情報などを活用して、処分場の設計や安全評価に必要な技術の開発を進めています(トピックス8-9, 8-10)。

また、これまでの研究開発成果を知識ベースとして体系的に管理・継承していくため、2010年に公開した知識マネジメントシステムを用いた知識ベースの拡充を継続するとともに、これまでの研究開発成果をウェブ上の報告書(CoolRep)として公開しています。

(CoolRep: https://kms1.jaea.go.jp/CoolRep/index.html

 

再処理の安全性向上と再処理技術の高度化を目指して

東海再処理施設では、潜在的な危険の低減に向け、溶液状態で貯蔵している放射性物質をより安定な形にするため、高放射性廃液のガラス固化とプルトニウム溶液のMOX粉末化処理にかかわる取組みを進めています。特に、高放射性廃液のガラス固化については約20年間の長期間を要する見込みであることから、これを着実に進めるため溶融炉の高度化技術開発に取り組んでいます。また、低放射性廃液の固化処理技術開発についても、環境への影響に配慮した硝酸分解処理技術開発や新しいセメント固化技術開発を進めています。

再処理技術の高度化にかかる取組みとして、プルトニウムとウランを硝酸溶液の状態で混合しマイクロ波加熱により燃料ペレット用の酸化物粉末とする「マイクロ波加熱直接脱硝法」の加熱効率データ取得を行いました。加熱効率を把握することは処理時間短縮や消費電力削減を図るために重要ですが、これまでほとんど報告されていないことから加熱試料の種類や試料高さを変えて加熱効率を詳細に調査しました。この結果、今後の装置改良や新しい装置の開発時に配慮すべき重要な知見を得ることができました(トピックス8-11)。