2-2 冷却材喪失事故時の燃料の健全性を評価する

−水蒸気雰囲気中の空気が燃料被覆管の高温酸化に及ぼす影響−

図2-6 酸化試験後試料の外観及び酸化膜断面の写真

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図2-6 酸化試験後試料の外観及び酸化膜断面の写真

(a)空気分圧70 %で1273 K、2400秒間酸化した被覆管試料の外観、(b)の左図に酸化膜断面の光学顕微鏡観察結果及び右図にエネルギー分散型X線分光法(EDS)による窒素(N)の面分析結果を示します。酸化膜と酸素固溶Zr(α-Zr(O))層との界面付近に窒化物(ZrN)及び多くの空隙が見られています。

 

図2-7 1473Kにおける酸化膜厚さの水蒸気雰囲気中の空気分圧依存性動

図2-7 1473 Kにおける酸化膜厚さの水蒸気雰囲気中の空気分圧依存性動

いずれの時間においても、空気分圧が増加するに伴って酸化膜厚さは増加していきます。

 

図2-8 1473Kにおける被覆管水素吸収量の水蒸気雰囲気中の空気分圧依存性

図2-8 1473 Kにおける被覆管水素吸収量の水蒸気雰囲気中の空気分圧依存性

いずれの時間においても、空気分圧の増加に伴って水素吸収量は増加していきます。空気分圧の高い領域での水素吸収量の減少は、雰囲気中の水蒸気分圧の低下によるものです。

 


発電用原子炉施設での冷却材喪失事故における燃料からの熱及び水素の発生は、燃料被覆管周囲の雰囲気に強く影響されます。燃料被覆管が水蒸気中で高温となった場合の酸化の様子及び酸化速度については、従来多くのデータや知見が得られてきたものの、使用済燃料プールでの事故の場合のように、水蒸気に空気が混入したような条件下での酸化については、ほとんど知見が得られていませんでした。本研究では、水蒸気に空気が混入した条件で燃料被覆管を冷却材喪失事故を模擬した温度に加熱し、その際の酸化の様子について調べました。

現在の燃料被覆管はジルコニウム(Zr)を主成分とし、高温の酸化性雰囲気中ではその表面に酸化膜を形成しますが、この酸化膜が厚くなると被覆管の機械的性質が劣化し、酸化が著しい場合には燃料の破断につながります。一方、雰囲気中の窒素は、窒化物を形成することでZrの酸化を促進させることが分かっています。また、高温においてZrと水蒸気が反応すると酸化とともに水素が発生します。この水素の一部は、燃料被覆管の金属部に吸収され燃料被覆管を脆くするなどの原因となります。このような被覆管での酸化膜の形成、窒素による酸化及び金属部水素吸収の促進は、冷却材喪失事故時の燃料棒の形状維持に悪影響を与えます。

本研究では、燃料被覆管材料として用いられるZr合金の一種であるジルカロイ4(Zry-4:未照射)試料を対象に、1273及び1473 Kの温度で、その水素吸収と酸化膜の成長に対する水蒸気雰囲気中の空気分圧の影響を評価しました。この結果から、被覆管の酸化は図2-6に見られるような酸化膜と金属部との界面付近で形成された窒化物に加え、図2-7のように水蒸気雰囲気中の空気分圧によっても加速されることが分かりました。

図2-8には、高温酸化中に燃料被覆管の金属部に吸収された水素量を示します。水素吸収が水蒸気雰囲気中の空気分圧の増加によって促進されることが分かります。これは、窒化物の形成によって酸化膜の緻密さが失われ、酸化反応に伴って生成した水素が金属部に到達しやすくなるためです。一方、空気分圧がある程度高くなると、雰囲気中の水蒸気分圧が低下し酸化に伴い発生する水素量が相対的に減るため、水素吸収量は低下する傾向を示します。

本研究により、空気が混入した水蒸気中で高温となった燃料被覆管の酸化メカニズムを明らかにすることができました。



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