6-3 プルトニウム燃焼高温ガス炉の安全性向上に向けて

−酸素ゲッターの機能を持つZrC層の被覆試験−

図6-5 原子力機構が所有するZrC被覆実験装置

図6-5 原子力機構が所有するZrC被覆実験装置

組成比1:1のZrCを化学蒸着できる臭化物法を採用した世界唯一の実験装置です。装置内部の流動床と呼ばれる領域で、温度1350 ℃で粒子を流動させながら被覆します。

 

図6-6 被覆実験で得られたZrC被覆層の外観と断面

図6-6 被覆実験で得られたZrC被覆層の外観と断面

ZrCは同じ炭化物セラミックスであるSiCと異なり、金属的な特性を併せ持ち、光沢のある外観をしています。断面の観察は、被覆粒子をダイヤモンドで研磨して行います。

 


軽水炉の使用済燃料の再処理で取り出されるプルトニウム(Pu)は、MOX燃料として軽水炉や高速炉で利用される計画です。また、物理的な固有安全性の特徴を持つ高温ガス炉を利用することでも、Puインベントリを減らしながら炉心溶融によるリスクを排除させつつ、安全にエネルギーを得られるメリットがあります。一方、核分裂性物質が6割以上を占める再処理Puを、効率良く大量に燃焼させるためには、燃焼度600 GWd/tという通常のウラン燃料の10倍以上の燃焼度が必要です。これを可能とする、核拡散抵抗性の高い高温ガス炉用Pu燃料の超高燃焼度における健全性の確保は、核セキュリティと安全性の両立の観点から重要です。

高温ガス炉に特徴的な被覆燃料粒子は、直径0.5 mm程度の燃料核を炭素層と炭化ケイ素(SiC)層の極薄セラミックス(厚さ25〜45 µm程度)で四重に被覆した、大きさ1 mmに満たない燃料です。この被覆燃料粒子のPuを、化学的に安定なイットリア安定化ジルコニア(Yttria Stabilized Zirconia:YSZ)の母材に固溶する方法で、被覆燃料粒子からのPuの回収が極めて困難になり、従来の酸化物燃料に比べて核セキュリティリスクを大幅に低減できます。しかしながら、被覆燃料粒子の高燃焼度化のためには、核分裂反応に伴う余剰酸素に起因する内圧破損に対する健全性の確保が課題でした。

本研究では、余剰酸素の分圧上昇の抑制によるPu燃焼高温ガス炉用燃料の高燃焼度での安全性向上を目的として、酸素ゲッターの機能を持たせた炭化ジルコニウム(ZrC)を燃料核へ直接被覆する技術を開発しました。熱的特性に優れるZrCをYSZ模擬燃料核へ直接被覆するには、炭素(C)とジルコニウム(Zr)の組成を定比(C/Zr比を1)に制御することが重要です。そこで、原子力機構が開発したZrC被覆実験装置(図6-5)を用いて、定比ZrCを被覆可能な臭化物化学蒸着法の被覆条件を調べました。

まず、これまで炭素層の存在下で最適化されていた定比ZrC被覆条件を修正する必要がありました。そこで、C成分が欠乏しやすいZrCの特性に着目し、C/Zr比が1を超える方向に、温度分布等を修正する工夫を行いました。YSZ模擬燃料核を用いて被覆試験を行った結果、燃焼度600 GWd/tにおける余剰酸素の捕捉に必要な厚さ(10 µm)の約2倍(約21 µm)の定比ZrCの直接被覆に成功しました(図6-6)。

今後は、化学的特性がPuに似たセリウム(Ce)をYSZに固溶させた模擬燃料核を製造し、これを用いたZrC被覆試験を通じて燃料製造の基盤技術を確立する計画です。

本研究は、文部科学省の原子力システム研究開発事業「プルトニウム燃焼高温ガス炉を実現するセキュリティ強化型安全燃料開発」の助成を受けました。