8-3 放射性廃棄物の処分施設の安定性を確保するために

−廃棄物容器内の空隙低減のための砂充てんによる受入基準の検討−

図8-9 基礎試験に用いた小型土槽及び加振機

図8-9 基礎試験に用いた小型土槽及び加振機

模擬廃棄物への砂質土の充てん状況が目視できるように、鋼製角型容器を模擬した小型土槽を強化ガラス製とし、半割にした模擬廃棄物をガラス面に設置しました。また、振動条件は市販で入手可能な振動台と同様の条件を設定しました。

 

図8-10 砂質土の充てん試験の結果

図8-10 砂質土の充てん試験の結果

模擬廃棄物を水平方向から1°ずつ傾斜が大きくなるように(角度:0°〜9°)設置し、振動条件を加速度2 G、周波数30 Hz、加振時間30分で加振した場合の砂質土の充てん結果です。

 


私たちは、低レベル放射性廃棄物のトレンチ処分を計画しています。トレンチ処分対象の金属等の廃棄物は、放射性物質の飛散防止、取扱いの容易性の観点から鋼製角型容器に収納して処分することとしていますが、トレンチ処分では、廃棄物を容器にセメント等で固型化することは法令上求められていないため、廃棄物を容器に収納して何も措置をしないと容器内には空隙が生じます。この空隙が大きい場合、将来トレンチ処分施設の陥没などの有害な影響につながる可能性があり、容器内に一定割合(20%)以上の空隙(有害な空隙)が生じないように砂等で充てんを行う必要があります。これは、充てんした砂質土の投入量、比重及び容積を基に確認されます。以上により、廃棄物容器内に砂質土を充てんする場合に有害な空隙が生じない充てん条件と充てん方法の標準的な手順を定めるため、模擬廃棄物を収納した鋼製角型容器内に砂質土を充てんし、その充てん性特性を確認する試験をしました。

試験条件として、模擬廃棄物は、充てん性が困難な条件を包含できるように、空隙が残留しやすいと考えられる熱交換器の伝熱管を用いました。また、片側の管口を閉塞して、より充てんが難しい形状で充てん試験を実施しました(図8-9)。試験は、鋼製角型容器を模擬した小型土槽に廃棄物が乱雑に収納されていることを模擬して、模擬廃棄物を上部ほど傾斜が大きくなるように配置し、土槽内に砂質土を充てんしました。この状態では、模擬廃棄物内に砂質土が充てんされないため、砂質土が充てんするように小型土槽を加振機により振動させ、一定時間の振動後に目視確認等により、砂質土の模擬廃棄物内への充てん性特性を把握しました。

試験の結果、模擬廃棄物の向きが振動方向に対して水平に配置していれば、模擬廃棄物内に一定の締め固め度で砂質土が充てんされることを確認できました。また、土槽内を均一に締め固めることができ、有害な空隙とならないことが確認できました。一方、乱雑な配置を模擬して振動方向に対して傾斜をつけて配置した模擬廃棄物は、傾斜が大きくなるほど充てん性が悪くなることを確認しました(図8-10)。得られた結果から、金属廃棄物を振動方向に対して水平に収納すれば充てん性の悪い細管でも砂質土を充てんできる見通しが得られ、鋼製角型容器の実規模サイズ(1 m3程度)における試験での試験条件を明らかにしました。

今後は、実規模試験を行い、トレンチ処分において、金属廃棄物の容器への収納方法や砂質土の充てん方法に係る標準的な手順を設定していきます。