4-6 焼却可能な試薬を使ったMA抽出分離プロセスの構築

−αγセルでのマイナーアクチノイド(MA)と希土類元素の一括回収試験−

図4-13 SELECTプロセスの構成と各ステップで使用する試薬

図4-13 SELECTプロセスの構成と各ステップで使用する試薬

二次廃棄物の発生量を抑えることのできる焼却可能な試薬を使用したMA抽出分離プロセスを構築しました。

 

図4-14 αγセル内でのMAと希土類元素の一括回収試験の様子

図4-14 αγセル内でのMAと希土類元素の一括回収試験の様子

(a)シリンジを用いたミキサーセトラー型抽出器からの試料採取、(b)サンプル瓶への試料の回収、(c)試験に使用した試薬(TDdDGA)を示します。

 


高レベル放射性廃棄物の有害度低減・減容化を目標に、使用済燃料及び使用済燃料からウラン(U)とプルトニウム(Pu)を回収した後の高レベル放射性廃液に含まれている様々な元素をその性質に応じて分離し、加速器駆動システム等で核変換を行う分離変換技術の研究を進めています。この目標の達成に必要な重要項目の一つとして、長期にわたる高い放射性毒性や発熱量を持つアメリシウム(Am)とキュリウム(Cm)を分離するプロセスの開発があります。なお、ここではAmとCmをまとめてマイナーアクチノイド(Minor Actinides:MA)と記載します。

これまでに開発された抽出分離プロセスではリンやイオウを含む試薬が使われていましたが、こうした試薬は焼却等による完全ガス化分解が難しく、二次廃棄物の発生量が増える要因となります。そこで、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)及び窒素(N)から構成されている試薬(CHON試薬)を用いた抽出分離プロセスを考え、SELECT(Solvent Extraction from Liquid-waste using Extractants of CHON–type for Transmutation)プロセスとして提案しました。

図4-13にSELECTプロセスの構成と使用する試薬を示します。使用済燃料及び高レベル放射性廃液に含まれている様々な元素を一つのステップで分離するのは困難なため、四つのステップを組み合わせた構成になっています。ステップ1において、使用済燃料の中で最も量が多いU及びその次に多いPuを他の元素から分離し、再利用するため回収します。ステップ2において、MAと化学的性質が似ている希土類元素を高レベル放射性廃液から一括して回収します。さらに、ステップ3でMAと希土類元素を分離し、ステップ4でAmとCmを分離します。

ステップ1については、モノアミド抽出剤(DEHBAやDEHDMPA)の適用により、使用済燃料の溶解液からUとPuをほぼ想定通りに回収できる試験結果を得ています。そこで、ステップ2の構築に向けた基礎試験として、ステップ1の試験で得た溶液をステップ2の供給液として使用し、ミキサーセトラー型抽出器を用いたMAと希土類元素の一括回収試験を行いました(図4-14)。この試験では放射能濃度の高い溶液を取り扱うため、放射線の遮へい能力が高いコンクリート製のαγセルの中に試験装置を設置し、マニピュレータを介して操作を行いました。

MAと希土類元素を回収する試薬として使用したTDdDGAは、これまで用いられていたTODGAよりも多くの量のMAと希土類元素を抽出できる長所があります。試験の結果、98%以上のAm及びCm、並びに86.9〜99.9%の希土類元素を回収し、ステップ2の成立性を支持する結果を得ました。

SELECTプロセスの開発をさらに進めるため、ステップ3及びステップ4に対して、それぞれHONTA及びADAAMを抽出剤に用いた試験を続けています。

(伴 康俊)