8-6 処分場閉鎖後の坑道周辺の岩盤状態変化を探る

−坑道埋め戻しに伴う岩盤の透水性の経時変化−

図8-12 人工バリア性能確認試験の概念図

図8-12 人工バリア性能確認試験の概念図

試験坑道4に緩衝材と模擬オーバーパックを定置し、坑道の一部を埋め戻し、注水することで、実際の処分環境を模擬しています。

 

図8-13 孔壁画像の展開図

図8-13 孔壁画像の展開図

区間2(10 m 〜12 m)の人工バリア設置孔周辺で割れ目が発達していることが分かります。

 

図8-14 透水試験レイアウト(a)平面図(b)断面図

図8-14 透水試験レイアウト(a)平面図(b)断面図

 

図8-15 透水試験結果

図8-15 透水試験結果

区間2及び3で、試験開始から約1年半で若干の透水係数の低下は見られますが、4年間を通じて大きく変化していないことが分かりました。

 


高レベル放射性廃棄物の地層処分では、処分坑道等の掘削によって坑道周辺に割れ目が発達し、岩盤中の水の通りやすさ(透水性)が増大する領域(掘削影響領域;Excavation Damaged Zone:EDZ)が発生します。この領域では、廃棄体を定置して処分場を閉鎖した後に、放射性核種が移行しやすくなる可能性があります。そのため、長期的なEDZの透水性の変化を予測するモデルを構築し、安全評価の精度向上につなげていく必要があります。そこで本研究では、透水性を予測するモデル構築の基礎となる知見として、幌延深地層研究センターの深度350 mの調査坑道で実施している人工バリア性能確認試験(図8-12)において、緩衝材やオーバーパック(人工バリア)の定置、坑道の一部埋め戻し、緩衝材や埋め戻し部への注水による再冠水の過程におけるEDZの透水性の時間変化を把握することを目的として、年1〜2回の頻度で4年間透水試験を実施することにより確認しました。

透水試験の実施に先立ち、人工バリア設置孔に向かって斜め下向きにボーリング孔(H4-2孔)を掘削しました。ボーリング孔内にカメラを挿入して観察した結果、図8-13に示す画像のように、人工バリア設置孔周辺で多くの割れ目が発達していることが分かりました。そこで、図8-13及び図8-14に示すように、割れ目の発達した領域(EDZ)を対象として二つの試験区間(区間2と3)を設定して透水試験を実施しました。また、比較のために、区間4として割れ目の発達していない領域においても試験を行いました。

人工バリア性能確認試験では、2014年10月〜12月に緩衝材の定置と試験坑道4の一部埋め戻しを行い、その後2015年1月から緩衝材と埋め戻し部への地下水の注水を開始しています。透水試験の結果、図8-15に示す通り、人工バリア設置孔周辺の割れ目が発達した区間2及び3では、人工バリア設置孔掘削直後は割れ目がない区間4と比較して3〜5桁透水係数が高くなっています。また、時間経過とともに1桁程度透水係数が低下しましたが、注水開始から1年程度経過した2016年1月以降は顕著な変化はありませんでした。

緩衝材への注水の過程では、孔内に設置した緩衝材が水を含んで膨潤し、人工バリア設置孔周辺の岩盤が圧縮された状態となります。しかしながら、透水係数は顕著に変化しなかったことから、岩盤が圧縮されても孔周辺のEDZの割れ目はそれほど閉じなかったと推定されます。このような結果は、長期的な透水性を予測するモデルを構築する際の経時変化に関する重要な知見となります。

(宮良 信勝)



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