図7-1 高速炉サイクル技術に関する研究開発の概要
高速炉サイクル技術は、我が国のエネルギー安全保障と地球温暖化対策の観点から核燃料サイクルの確立に必須の課題であり、「エネルギー基本計画」(2014年4月閣議決定)においても研究開発に取り組むことが明記されました。エネルギー基本計画を踏まえて国が定めた第3期中長期目標に基づき、2015年度以降は、国際協力も活用しつつ「もんじゅ」の研究開発,高速炉の実証技術の確立に向けた研究開発及び放射性廃棄物の減容化・有害度低減の研究開発を実施しています(図7-1)。
「もんじゅ」については、廃棄物減容・有害度低減等関連技術のための国際的な研究拠点と位置付け、新規制基準への対応など克服すべき課題に対する取組みを重点的に推進します。
高速炉の実証技術の確立に向けた研究開発では、「もんじゅ」の研究開発で得られる成果を活用しつつ、実証段階にある仏国ASTRID炉等の国際プロジェクトへの参画を通じ、高速炉の研究開発を行います。
放射性廃棄物の減容化・有害度低減の研究開発については、高速炉を用いた核変換により、高レベル放射性廃棄物を減容化し、長期に残留する有害度を低減する技術の主要な開発課題であるマイナーアクチノイド(MA)の分離・回収技術,MA含有燃料の性能評価等を国際的なネットワークを活用しつつ推進します。
本章では高速炉の安全性強化,廃棄物減容・有害度低減及び「もんじゅ」における研究開発成果について紹介します。
次世代のナトリウム冷却高速炉の国際標準となる「安全設計クライテリア」及び「安全設計ガイドライン」の整備を国際協力の場で進めています(トピックス7-1)。
炉心安全性と核変換性能を調和させたナトリウム冷却高速炉用のMA核変換炉心を検討し、MAの核変換量を従来炉の2倍とする大幅な性能改善の見通しを得ました(トピックス7-2)。
内部にダクトを設置した燃料集合体が、炉心崩壊事故時に急激な出力上昇が起こらないよう、燃料を速やかに炉心の外へ流出させることに有効であることを実験により確認しました(トピックス7-3)。
蒸気発生器の伝熱管破損時に想定されるナトリウム−水反応現象に関して、伝熱管の腐食作用に対する影響因子の効果を実験により把握しました(トピックス7-4)。
燃料製造や照射挙動に大きな影響を与える酸化物燃料中の酸素と金属の原子数比(O/M比)と酸素ポテンシャルの関係を実験により把握し、MAの一つであるアメリシウム(Am)の影響を評価しました(トピックス7-5)。
「もんじゅ」敷地内破砕帯について、フィッション・トラック年代測定法による活動時期の推定を試みました(トピックス7-6)。